映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年08月29日

「リチャードを探して」アル・パチーノ

`[hR.jpg
まずこの顔を見てほしい。どういう人だろうか。

何故この作品を観たかというと「リチャード3世」の映画が観たくて探したのだがレンタルになくて(ほんとに「リチャードを探した」わけである)仕方なく、と言ってはなんだがアメリカ人役者であるアル・パチーノがイギリスで「リチャード3世」の映画を撮ったらどうなるか、という仮定ドキュンタリー映画を見つけ、借りてみたわけだ。
結果、非常に面白かったのだが、しかしなかなかに渋い内容である。アル・パチーノの初監督作品ということらしいがこの映画に出てくる一般人の反応どおりに興味がなければ全く面白くないのかもしれない。

この記事では本作はいつもどおり、そしてジョセフィン・ティ「時の娘」のネタバレになるのでご容赦を。

前置きが長いのだが何故急に「リチャード3世」を観たくなったかというと↑に書いたようにジョセフィン・ティ「時の娘」を読み返していたからなのだ。もう何度も(癖の斜め読みだが)読んでいても面白い。
名作ミステリーの一つといわれているこの小説はイギリスでは知らない者のない有名なこの国王リチャード3世の言い伝えは本当なのだろうか?という謎解きなのである。
(差別的表現を多く出すので申し訳ない)せむしで片腕が不自由で冷酷な心を持ち王になるために兄弟と二人の幼い甥っ子を殺したとされる怖ろしい悪党、それがリチャードのイメージなのだそうである。
しかし反面このように有名な王もいないということらしい。
舞台はイギリス・ロンドン。ケガでベッドに寝たきりになり暇を持て余したイギリス人警部が若いアメリカ青年を足にして情報をかき集めさせ500年も昔に(この小説自体が古いので)起きた真相を解き明かす、という筋立て。
設定も面白く頭の切れるイギリス警部と屈託のないアメリカ青年のやり取りも楽しい。
誰もが疑わない悪党を違った視点で見つめる発想は他のものにも応用できそうで(されているが)興味深いものである。一番ぞくぞくするのは予備知識のないまま彼の肖像画を見た時の人々の感想のまあ一致しないこと。そして彼の病状をぴたりと言い当てた医者の眼力。
うーむ、しかしこれはいくら美化して描いているとはいえ、人物をリアルにかく西洋画だからできることで日本の絵でもできるのだろうか、とは考えてしまう。例えばあの有名な織田信長の絵には彼の全てが映し出されているものなのだろうか。それにしては劇画などで観る信長は随分違う顔かたちになってるが。どんどん話がそれて行く。
元に戻すと「時の娘」を楽しんで読んではいるものの肝腎のリチャード3世の一般的姿はちっとも知らぬ。歴史の本、というよりどんなイメージなのかを知りたくて映画を観たかったのだが、本作になってしまったわけだ。

が、むしろ「リチャード3世」のイメージを知るにはこの映画を観てよかったのかもしれない。
監督・主演のアルを始め、登場してくるイギリス人俳優達のリチャードの印象がよく判った。平行して街行く一般の人にシェークスピアが好きか聞くのだが殆どの人(イギリス人)が興味がないようで何度も「日本人がシェークスピアに興味を持っている」というややあきれた感の発言があって苦笑なのだが私も興味はないわけではない。但し読むのは戯曲じゃなく小説化された読み物だけど。戯曲は無理。しかも英語じゃなければ意味はない、などと言われると小説でいいや、と思ってしまう。

で、本作であるが。
アメリカ映画ということもあり、アメリカ人のアル・パチーノがシェークスピアかよ、と言われないための防御がまずされる。イギリス人の口から「アメリカ人は自分で障壁を作りすぎ。劣等感を持っている。アメリカ英語だから無理ということではなくその心を知ることが大事」と言ってもらう。アル自身も「とらわれずにやるつもりだ」と自分を励ましている。だがやはり発音が重要らしく練習する。
舞台では大声で話しながらも自分の内面を出すのが難しいが映画では抑えた方法でいいのでは、という助言がありながらもパチーノ氏、結構大げさにやっているかも。
観る人が観たらパチーノ氏のシェークスピアがどう観えるか判らないが、どうせ私はアメリカ英語とキングスイングリッシュの区別もつきはしない。

しかし思うのはパチーノ氏、本当はマジでリチャードを演りたかったのに「アメリカ人じゃ無理だよ」或いは「アメリカでマジな「リチャード3世」じゃ受けないよ」てなことでこーゆードキュメンタリー風に逃げてしまったんではないのだろうか。(なにか事情があるとかは知らないので想像だ)
製作の過程を映す(ような場面)はいいとしても映画の部分はかなり暗く重く、自由なアメリカ人的発想でもないようでやはりイギリス風に縛られてしまっているのではなかろうか。そのままやってたら重すぎたに違いない。
忠実な風でいて醜いはずのリチャードがアルだとハンサムすぎるし。

とにかくリチャード3世がどういうイメージでどう作られえていくのか、目的にぴったりの映画で大変うれしかった。
次は本当のリチャード3世を観たいものだ(というとアルに失礼だが)
それにしても確かに悪い人間というのはいつの世でも一番人の心を惹きつけるものなのだ。困ったことに。

監督:アル・パチーノ 出演:アル・パチーノ アレック・ボールドウィン ウィノナ・ライダー エステル・パーソンズ アイダン・クイン ケビン・スペイシー ジョン・ギールグッド ケネス・ブラナー バネッサ・レッドグレーブ ケビン・クライン エイダン・クイン (ご覧のとおり怱々たるメンバーである)
1996年アメリカ

`[hT.jpg




ラベル:演劇
posted by フェイユイ at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。