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2007年09月23日

『ルワンダの涙 』マイケル・ケイトン・ジョーンズ

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つい先日やっと観た『ホテル・ルワンダ』と同じ虐殺についての映画でありながら違った語り口である。
同じように突然起こった虐殺の為に自分を守ってくれるかもしれない場所(あちらではホテルであり、ここでは学校だった)に追い詰められたツチ族が逃げ込んでくる。そこを守る国連の兵士たちはいるのだが一歩外へ出ればもう命はなくそこから出て行く術もないという状況も同じである。

違うのはまず『ホテル』の方はルワンダ人のホテル支配人の目から物事を見ているのに対しこちらでは白人である若い英語教師とカソリック神父が目になっているというところである。そして彼らはこの「アフリカの一つの国で起きた集団虐殺」に対して全く自分達が非力である事を思い知らされる、という筋立てになっている。

『ホテル』はかなり視野が広く取られているように感じたが(広範囲にわたって色々な側面が実に巧く語られていた)『涙』は若い教師と老神父とその周りの子供たちに焦点が置かれていて白人目線なのにより物語が身近なものになっている。
虐殺の場面もこちらでは教師のジョーとクリストファー神父がその惨たらしい殺害現場を直視していて怖ろしさがより迫っている。

反面、先に『ホテル・ルワンダ』を観ているから思うのだが、あちらでは主人公がフツ族の男性であった。そしてツチ族の妻を持っているということで大きな苦しみを味わう事になる。
冒頭でもツチ族とフツ族の女性同士の友人という二人が登場し全ての人々が憎しみあっているわけではないことが判る。

だがここではそういった関係は描かれていなかった(多分)のでこれだけを観た人はフツ族は皆凶暴で無知で冷酷であり、ツチ族は少女とその父親のように優しく理性があり神を信じている人たちと分類されてしまいそうな気がする。他の方たちが極端にそう信じるかは判らないが、私自身はこちらだけを観ていたらどう考えたのか想像がつかない。やはり一つの映画、誰かだけの情報を聞くのは偏ってしまう、ということかもしれない。
実際穏健派のフツ族も大勢が虐殺されているのだから、暴力を嫌いツチ族と親しくしていこうと考えているフツ族もいたはずである。だがそういう人はどうしても過激派に負けてしまう。そして元々はそうでなかった者たちですら集団心理によって異常な衝動を持ってしまうのだ。最初は学校で優しげに働いていた青年が血のついたナタをぶら下げている姿は衝撃である。
それまでは同じ学校にいたはずの青年がある日変貌してしまったのだ。

クリストファー、という名前は先日映画『魔王』で聞いた名前である。子供を肩に乗せ、河を渡ったという聖クリストファーの名前である。
長い間アフリカで神の心を説いてきたクリストファー神父は最後まで子供たちを守ろうとする。その代償は自分自身の命であった。彼のモデルとなった神父が実在したそうである。
一方の青年教師のモデルは特にないらしく彼はいいことを言っていても結局何も出来ない者たち(私自身もそうだが)の姿を表しているのだろう。

走る事が大好きで足の速い少女マリーが最後ナタを振り回し興奮しきったフツ族からクリストファー神父の助けで逃れ走り出す。

彼女は残した父親が必ず殺されてしまうことを知っているのだ。そして憧れていたジョー先生が自分を捨てていったことを思っただろう。どこへ続くのか判らない道をマリーが懸命に走っていく場面は悲しくまた怖ろしかった。

監督:マイケル・ケイトン・ジョーンズ 出演:ジョン・ハート ヒュー・ダンシー クレア=ホープ・アシティ ドミニク・ホルヴィッツ ニコラ・ウォーカー
2005年イギリス/ドイツ
クリストファー神父を演じたのがジョン・ハートだと後で知った。『ミッドナイト・エクスプレス』や『エレファントマン』で有名だが(この辺のタイトルが一番先に出るというのが)名バイプレイヤーといった感がある上、顔に強烈な印象がないので気づかなかったのだ(決して悪く言ってるわけではない)温和な人柄でありながら融通のきかない兵士に激怒し、危険を承知で薬を買いに行ったり子供たちを守る神父を演じていて素晴らしかった。

『ホテル・ルワンダ』の方だったか、「〜族、という表記はやや差別的な意味にとられそうだが、ここでは判りやすいよう用いた」とあって私もそれに倣った。確かに映画の中では「フツ」「ツチ」とだけ発音しているのだけど。


posted by フェイユイ at 20:19| Comment(0) | TrackBack(0) | アフリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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