映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年10月07日

『ガーダ パレスチナの詩 』古居みずえ

ガーダ.jpg

1993年、パレスチナ、ガザ地区難民キャンプで日本人女性ジャーナリスト古居みずえはガーダと出会う。それから古居がガーダを撮り続けた12年間に及ぶドキュメンタリー映画である。

冒頭、封建的社会で生きる23歳の女性ガーダは結婚で悩んでいる。親が決めた相手とはいえ、伝統に縛られるのは嫌だと思っている、堅苦しい式はやめエジプトへ新婚旅行へ行きたいと願っているのだ。若い女性なら全く考えそうなことでガーダに共感できる。ちなみにガーダより少し前になるとはいえ日本人の私は相手は自分が選んだ相手だったが結婚式をしたくない、という意見は両方の親から斥けられ渋々結婚式をすることになったという苦い思い出がある。新婚旅行は行かなかった(行けなかった、か)相手を選ぶ権利の方が重要ではあるが日本人も伝統に縛られないわけではない。

だが観ててほっとしたのはガーダの夫・ナセルがとても寛容で優しそうな男性だったということ。料理もナセルの方が上手で冗談かもしれないがガーダはまったく料理をしないよ、なんて言っている。
封建的などと書かれているから酷い男女差別があるのか、と思ったら別の男性にしても女性に対して穏やかで優しげなのでパレスチナというところはそういう感じなのだろうか。
男女で交わす愛の歌にも情愛が満ちている。

さて問題はパレスチナにおけるイスラエルとの対立である。本作では無論パレスチナに視点が置かれているので「イスラエル兵」に絶え間ない銃撃を受けるパレスチナ人と投石によって反撃するパレスチナ人という映像が登場する。
まだ幼い少年たちが石を投げ、銃撃を受けて命を落とす。嘆き悲しむ両親。イスラエルへの復讐の言葉が口をついて出る。
長い歴史の中での複雑な確執。詳しいことは知らない私でもそれらが簡単に決着がつくわけではないとは想像できる。
またここで映し出されたことのみが全てではないこともわかるが、それでもこの地でたくさんの人々の血が流れ涙が流れていることも事実のはずだ。
男達は戦い、女性たちは「歌うことで抵抗」するのだという。

しかし一体平和を望まない人々がいるのだろうか。何故報復は繰り返され悲しみは終わらないのか。同じ苦しみを相手にも与えて欲しいと願えばそのお返しがまた与えられるというのに。
日本人である自分はどうしても平和であることが一番大切だと思ってしまうのだがそうではないのだろうか。

教師でもあったガーダは自分を取り続ける古居に触発され自ら難民生活を余儀なくされたパレスチナの人々、特に女性たちの言葉と歌を集めて本にしようと行動を始める。
ガザ難民地区で生まれ育ったガーダがパレスチナの各地で自分のルーツを求める、その様を映し出すというドキュメンタリーとなっていく。
表舞台に立つ男性の姿は多く観る事があるがイスラム圏の女性たちをあらわにしたものはやはり女性監督でなければ撮ることは難しかっただろう。
歌の中に彼女らの悲しみや苦しみを感じることも出来る。

本作でガーダは英語を話している。元々彼女は古居監督の通訳という関係だったようだ。
その内にガーダが結婚するこちになり古居監督のカメラが大勢からガーダ個人へと向けられるようになったのだ。
ガーダの導きのため古居監督の存在は外国人という枠を取り払うことになったのだろう。ここに映し出される人々の表情は男女とも和らいだものである。女性だけでなく男性も固い表向きの仮面を取り払っているかのようである。
特典の中で別のカメラマンの手によるガーダの古居監督への感謝の言葉があり、胸をうつ。
同じ女性として自分の考え・思いを公に表現することを教えてくれたことへの感謝であった。

監督:古居みずえ
2005年日本

近々パレスチナのテロリストの若者達を描いた『パラダイス・ナウ』もDVD化されて観ることができる。


ラベル:歴史 戦争
posted by フェイユイ at 21:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 西アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ごぶさたです。
この映画、丁度地元のドキュメンタリー映画祭で上映されました。DVDなるなと思って、違う作品を観たのでした。もうなっていたのですね。
Posted by さち at 2007年10月08日 20:54
お久し振りです。さちさん。
ドキュメンタリー映画際いいですね。最近特にドキュメンタリーが注目されてますし自分も非常に興味があります。本作などは12年間もの間一人の女性を追ったもので普通の映画ではあり得ない感覚ですね。
女性を描いたもの、というのはまたどうしても観たくなります。ここでは女性だけでなく男性も内面がよりさらけ出されているようでそれも興味深いものでした。
Posted by フェイユイ at 2007年10月08日 23:23
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