映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年10月22日

『[月因]脂扣(ルージュ)』關錦鵬(スタンリー・クワン)

月因]脂扣(ルージュ).jpg

レスリーの映画は私にとって単なる作品と言うだけでなく色々な思い出や自分の気持ちが入り込んでいるのでその作品だけの感想、というのは言いにくい。
この作品は特にそれ自体はそれほど優れたものでないのかもしれないが私には思い出深いものがあり冷静には観れない。
だがこうして見返していてもレスリー・チャンとアニタ・ムイの他に比べようのない美しさ・雰囲気・存在感というものを強く感じて嬉しくなった。
レスリーの映画について語る時、どうしても涙がこみ上げてくるのを抑えることはできない。
今もう文字がかすんでしまうのだが、無理に抑えることなしに書いてみよう。

裕福な家の跡取り息子・十二少=チャンは遊郭で知った不思議な印象をあたえる如花=ユーファーと恋に落ちる。
阿片に身をゆだね愛し合う二人。やがてチャンは芝居の道に進みたいと言い出す。才能があるとは言えないチャンをユーファーは見守った。だが跡取り息子を奪われたとチャンの父母と婚約者が二人の中を裂いた。
別れられない二人は心中の道を選んだ。3月8日11時という数字を忘れないでと約束して。

1930年代の香港・遊郭で命を絶ったユーファーは現代(1987年)にこの世に蘇る。あの世で待ち続けたチャンと会えなかったのだ。
ユーファーは新聞社で知り合った若い恋人達ユンとチョウに助けられながらチャンとの再会を待ち望むのだった。

幽霊と時間の交錯を扱ったものは香港もしくは中国でとても好まれる題材ではないのだろうか。それはジェイ・チョウの作品にも感じられこの映画を思い出した。
とはいえ多分どの国の人々も時間を越え霊となっても愛する人を捜し求める物語には感動するものだろう。

アニタ・ムイの演じるユーファーは幽霊とはいえ特別な演出や映像処理で幽霊に見せかけてはいない。疲れると顔が青ざめるだけで普通の人間のように登場している。が、昔の遊女らしく動きがゆったりとしてしなを作る様がこの世の者ではないようで確かに気持ち悪く感じられる。幽霊の証明をするために「頭を取ってみせて」と言われたりリンゴをかじると黒い汁を口から流しリンゴもしなびてしまったというところが香港の幽霊なのだろうか。
それにしても30年代の遊女であるアニタの素敵なこと。独特の眼差しも真っ赤な紅を差したぽってりした唇も妖しい色香が漂いながらもどこかりんとしたところがあるのだ。
そしてそのユーファーが死んでもなお愛し続けた男がレスリー演じる十二少=チャンである。
冒頭、階段ですれ違う娘達に流し目をくれるチャンにすでにどっぷりと溺れてしまう。
裕福なお坊ちゃまで世間知らず。役者に憧れてもいつもユーファーに付き添われ甘えてばかりいる美しい横顔。
ユーファーが用意する阿片煙草を朦朧とした表情で艶やかに微笑む。

映画ではチャンはユーファーの後を追わず生きながらえてしまいユーファーから別れを告げられる。
だが現実ではレスリーが亡くなった同じ年アニタも亡くなってしまった。きっと天国で二人は出会っただろう。
現実の二人は恋人同士というわけではなかったがとても仲のよい友人、それ以上の深いつながりを持っていたと聞いたから。
この映画はそんな二人を思い出して苦しくなってしまうのだ。

現代でユーファーを助ける新聞社のユンを演じたのはアレックス・マン(萬梓良)香港映画では有名な男優である。
悪役のイメージが強いのかもしれないがここではとても優しい青年なのである。

私としてはこの作品の30年代の物語の隠微な雰囲気がたまらなく好きである。
遊郭の一室で阿片を吸い夢を見ている美しい女と男。
危険な香りであるのだが様々な映画の中でも忘れられない場面の一つなのである。

監督:關錦鵬(スタンリー・クワン)出演:梅艶芳(アニタ・ムイ)、張國榮(レスリー・チャン)、萬梓良(アレックス・マン)
1988年香港


posted by フェイユイ at 23:35| Comment(2) | TrackBack(1) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイユイさん、はじめまして。
ブログ「ONE DAY」のkadoorie-ave(=カドゥーリー・アヴェニュー)と申します。
私のブログで「ルージュ」について触れたのですが、あの映画のことを本当に気持ちにピッタリ来る文章で書いていらしたので、ずうずうしくも文中でリンクさせていただきました。

よろしくお願いいたします。
Posted by kadoorie-ave at 2009年06月05日 03:08
はじめまして kadoorie-aveさん。
このような拙いブログとリンクしていただき光栄です。
kadoorie-aveはイラストレーターでいらっしゃるのですね。
チャイナ服と言えばやはり『花様年華』ですねー。サイドに貼られてましたが。
この映画も 『花様年華』も雰囲気と服装が素晴らしく大好きです。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by フェイユイ at 2009年06月05日 17:00
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