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2007年11月05日

『フランケンシュタインの花嫁 』ジェームズ・ホエール

フランケンシュタインの花嫁.jpgフランケンシュタインの花嫁2.jpg

ジェームズ・ホエール監督『フランケンシュタイン』の同監督による2作目である。ホラー映画においてこの2作目が屈指の名作と呼ばれている。

フランケンシュタインの怪物は誰と出会ってもその怖ろしい容貌のために人々は叫び声を上げて逃げていく。彼自身は優しく接しようとしてもその気持ちは通じないのである。怪物の心は荒れ果てていくのだった。
私はこの映画を観て解説で初めて知ったのだが、この映画監督ホエール氏は同性愛者だったということである。
その映像も出てくるが長身で素晴らしい美貌の男性である。『フランケンシュタイン』が有名ではあるが当時たくさんの映画作品を作っている人気監督であったらしい。が、同性愛はまだ非常に迫害を受けていた時代である。ホエール氏にとって忌み嫌われなぶり者にされるこの怪物は自分を写した姿ということなのだった。

と、こう書いてくると高尚な芸術めいたものを想像させてしまうかもしれないが、本作はあくまでも人々を楽しませたホラーなのである。
しかも全編を通して思わず笑ってしまうコメディなのであって深刻な哲学や告発ではない。多くの観客が怪物の真似をして関節の曲がらない歩き方をしてみたり唸り声をあげたり「アローン・バッド、フレンド・グッド」などという片言の言葉で話したりしてみるものだろう。
知識のない怪物がもがけばもがくほど人々に危害を加え怖れられていく様は哀れな笑いに満ちている。何も知らないままそんな怪物を恐れ逃げ惑い、また捕らえようとする人々もおかしさと悲しさが隣り合っているのだ。

本作で最も感動的なのは森の中で一人きりひっそりと住んでいる隠者の老人がいる。
彼は盲目で忘れ去られた存在であるらしい。彼も怪物同様仲間はずれにされているのだ。
目が見えない老人は怪物の外見は気にならない。人に追われて怪我をした怪物を家に招きいれ、食べ物と飲み物、寝床を勧めてくれた。そして「私にも友人ができた」と喜ぶのだった。
それまで絶えず迫害を受けていた怪物が初めて暖かいぬくもりを覚える。老人は彼に言葉を教え、音楽の喜びも与えた。怪物は老人によって人間の心を持つことを知ったのではないか。
楽しそうに葉巻を咥えて老人の弾くバイオリンに身を躍らせる怪物。だがその楽しい時間も結局普通の人々によって奪い去られてしまうのだ。
この場面で本作は単なるホラー映画ではない作品になっているのだ。一人ぼっちの老人と怪物の心の触れ合いが温かく伝わってくる。

映画は小説『フランケンシュタインの怪物』を書いたメアリー・シェリーが夫であり詩人のシェリーとバイロン卿に物語の続きを語り始める、という手法で展開される。
美しく装った(胸の広く開いた優雅なドレス)メアリーの手を取りながら「このような繊細な指からあの怖ろしい物語が生まれるとは」というバイロン卿の台詞が効いている。贅沢な城の一室で轟く雷鳴を聞きながらメアリーは語り始める。

焼死したと思われた怪物は生き残っており森の中を彷徨う。同じく死んだと思われたフランケンシュタイン男爵も生き長らえていた。

フランケンシュタイン男爵は人間を造ってしまったということに後悔していた。だがそこにプレトリアス博士と言う男が登場し彼の力を借りて怪物の女版を作りたいと言い出すのだ。
愛妻を誘拐されフランケンシュタインは仕方なく怪物の花嫁造りに加わる。
狂喜じみたプレトリアス博士が印象的である。彼は瓶の中で小さな人造人間を作っていたりしてなんとも不思議な人物である。
フランケンシュタインがファウストならプレトリアスはメフェストフェレスなのだという説明が頷けた。
怪物の花嫁は結局怪物を受け入れることができず、怪物は失望する。そして彼は自分を生んだフランケンシュタインは許して逃がしてやり、夢を与え奪ったプレトリアスは「死に値する」といって自分、花嫁ともども実験室である塔を破壊してしまうのだ。

知らない人はいないだろうボリス・カーロフの怪物像と共にその花嫁のスタイルも印象的である。日本ではそれほど知名度がないのかもしれないがアメリカではカーロフの怪物に負けないほど有名な女怪物であるらしい。私もさすがに写真であの奇抜なヘアスタイルは知っていたのだが。

それにしてもこの孤独な怪物をここまで有名にした映画監督が自分の体験から来る心情でこの作品を作っていたのだとは。
イギリス労働者階級の生まれでありながら芸術家的才能に溢れていた彼は幼い時からその才能ゆえに孤独だったらしい。
成功した映画監督でありながらも専属だったユニヴァーサルがなくなり,MGMに移ってからは自由を奪われ型どおりの製作を押し付けられ引退。後に自ら命を絶ったという。
彼を映画化した作品もあり(『ゴッド・アンド・モンスター』)是非観たいものである。

監督:ジェームズ・ホエール 出演:ボリス・カーロフ ヴァレリー・ホブソン エルザ・ランチェスター コリン・クライブ ウォルター・ブレナン
1935年アメリカ

1作目では無名で名前表記が“怪物=?”となっていたというボリス・カーロフも2作目は一躍有名俳優に。
名前もトップに刻まれている。(変わりに花嫁が“?”に)


posted by フェイユイ at 23:56| Comment(0) | TrackBack(1) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: [本稿は、「フランケンシュタインと出産の神話(前篇)」の続篇である。] ← 16
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Tracked: 2008-10-18 11:03
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