映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年11月11日

『2046』再び 王家衛

2046c.jpg
2046

今更ながら感じているのだけど王家衛の作品というのはひたすら青臭くて子供っぽい映画なのである。
この辺を好きになったらもう入り込んでしまうし、駄目だったら何がなにやらさっぱり。てな感じになってしまう。
私としては恥ずかしいと思いながらもそういった青い時間を眺めていたくてつい観てしまうのではないだろうか。
「俺と一緒に行かないか」がキーワードになっているなんていうのがもうすでに子供の感覚なのであって主婦だったら晩御飯の用意もしなきゃいかんし洗濯物も溜めたくないしそんな言葉くらいでそうそう出かけられはしないのだ。と言っても作中のヒロイン達は全くついていってはいない。女はなにかとしがらみが多いのである。
「すべての記憶は涙で濡れている」ちょっと恥ずかしくなる言葉である。自分の記憶を覗いてみてもまあそんなに涙ばかりでもなく馬鹿馬鹿しいのやらただただおかしい奴もころがっているわけでこれなんかも若い時代になら書いてみたい言葉なのだ。

トニー・レオンがまるでセンチメンタルな男を代表するかのように終始悲しみを胸に抱いている。若い女を抱く時も別の女と話すときも彼の心に住んでいるのはかつて愛したただ一人の女性。許されない恋のために別れなければならなかったその人。
本作では新しい恋の相手としてチャン・ツィイーが登場する。彼女とはひたすら肉体交渉を持つトニーであったが、ひそかに本気で愛してしまうフェイ・ウォンとコン・リーには精神的つながりのみである。
本気の相手は精神だけ、浮気な相手は肉体のみ。男の愛の形が現れてしまったようだ。

私が最も同情してしまうのはカリーナだ。彼女が思い出して泣く相手はレスリーだから。
この中ではその説明はない。
知っているものは知っている。ただそれだけのことなのだ。

ミステリー・トレインのパートに木村拓哉が登場する。どういうものか彼の起用に不満を持つ観客が多いようなのだが私はなかなかよいのではないかと思っている。(日本人役なら金城武でもよかった、というか彼も観たかった、と思わなくもないが)
このSF的雰囲気の漂うトレインパートが結構好きなのだ。
1224−1225区間は寒いので相手を見つけて体を温めなければいけない。また数字遊びだがクリスマス期間だから人恋しくなるというところがまた子供っぽい。
フェイ・ウォンはアンドロイド役もホテルの娘役も可愛らしいが特にアンドロイドの彼女は素敵である。

トレインの中でアンドロイドが10時間後100時間後1000時間後と待っている。
小説を書き直そうとしてトニーが万年筆を止めたまま10時間後100時間後と待っている。1000時間後となったらどうしようかと思ったがさすがにそこまではなかった。

2046と言う数字は男の思い出の部屋の番号なのである。彼が愛する人のことを思い出す時その数字が浮かんでくる。
2046に記憶を探すことはできても彼がそこへ戻ることはもうできないのだ。
秘密の言葉は穴の中に封じ込められ誰にも知られることもない。

王家衛の世界は独特で秘密クラブのようでもある。会員でないとその扉は容易に開かない。
本作は今までの作品をすべて思い出させるようなつくりになっているのでそれらを知らないままに観た者にはますます判りにくいに違いない。知っている者ならその秘密を知っていることに密かな喜びを感じてしまうはずだ。
少しだけ登場するチャン・チェンなんて大好きな音を求めて彷徨う旅人なのである。

監督/脚本:王家衛 撮影:杜可風 美術:張叔平 出演:梁朝偉(トニー・レオン) 章子怡(チャン・ツィイー) 王菲(フェイ・ウォン)、劉嘉玲 (カリーナ・ラウ)木村拓哉、張曼玉 (マギー・チャン) 鞏俐(コン・リー)、チャン・チェン、ドン・ジエ
2004年香港/中国


posted by フェイユイ at 23:15| Comment(8) | TrackBack(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「2046」は王家衛の美術館(あるいは博物館)ですね。王家衛の映画について博識があれば、あるほど楽しめます。
王家衛の映画は、豪華なスター達と訳の解らない断片的な話。元脚本家とは思えないです。
MVの映像のように美しい映像が続くと思えば、ちゃんとストーリーになっている部分もある。トニーが小説の続きを書こうとして苦悩している姿は、王家衛自身とダブリます。

王家衛の映画を観て思うのは、香港のゴダールだということです。
Posted by おおくぼ at 2007年11月12日 19:35
一度目の時は正直???でしたが(と言ってもその???が楽しみなのではありますが)今回は嬉しいことにかなりわかってきました(笑)

残念ながらゴダールは『勝手にしやがれ』しか観てません^^;
でもこれは大好きです。カッコいいから。
なのでゴダールと王家衛を比較する事はできないのですが、ゴダールを観る事があったらその辺も楽しみです。
Posted by フェイユイ at 2007年11月12日 23:30
ゴダールの作品は多いですね。時代ごとに変化しています。近年の作品では『アワーミュージック』が美しく、西洋絵画が、そのまま映画になったような作品でした。
初期の『気狂いピエロ』は、北野武の『ソナチネ』に影響を与えています。

ゴダール、王家衛、太宰治について

大人気・香港在住ブログから

http://blog.livedoor.jp/riehk/archives/8770716.html
Posted by おおくぼ at 2007年11月13日 18:28
色々ありがとうございます。
おすすめのブログのかた、思い込み激しくて自分のようだと思ってしまいました(笑)
私もすぐ誰と誰はいっしょだー、とかばかり叫んでる。

北野武も全然観てないのですよねー^^;
Posted by フェイユイ at 2007年11月13日 23:08
人気アジア映画ブログ『graceの「こ〜んなまいにち」』を読んでいたら、王家衛とゴダールについて書いていました。

http://gracediary.blog3.fc2.com/blog-entry-1731.html

『アルファヴィル』です。ゴダールの初期作品が好きなんですね。白黒映画ですけど。でもゴダールの総天然色映画って王家衛に負けないぐらい綺麗ですけど。
Posted by おおくぼ at 2007年11月23日 19:05
これはありがたい!!
実はこれを観たかったんですが検索の仕方がわからなくて(笑)
さすがになんのことやらわかりませんでしたが(笑)観れた、というだけで満足です〜。
ゴダールも観てみたいと思いつつも(笑)
Posted by フェイユイ at 2007年11月23日 23:48
王家衛のはYouTube上に色々アップされています。

自分のブログにも少しリンクしたことがあります。服屋の「「タケオ・キクチ」のCMとか。


http://blogs.dion.ne.jp/tacthit/archives/6478476.html
Posted by おおくぼ at 2007年11月25日 20:26
タケオキクチを拝見させてもらいました。浅野忠信と王家衛もよいですねー。
是非映画もやって欲しいものです。
Posted by フェイユイ at 2007年11月25日 23:35
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。