映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年11月14日

『ゾディアック』アレクサンダー・バークレー

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THE ZODIAC

もう一つのゾディアック映画である。監督はアレクサンダー・バークレー。2005年製作となっているので2006年のフィンチャー作品より少し早いわけだ。かなりの長時間(157分)だったフィンチャー作に比べかなり短い92分となっている。制作費は見るからにかなり低いものであることがわかる。殆どテレビドラマのようですらある。

だがしかしこれがなかなか面白かった。むしろこちらの方が『ゾディアックを扱った作品』としてはまとまっていたのではないか、とすら思える。

フィンチャー作品では感じなかったのだが本作は低予算のために画像が荒い分、現場辺りの田舎っぽさがよく出ていて物悲しく感じるのが却ってよい。新聞社もしょぼくて親しみが持てる。
まあ、自分はバレーホという場所を知っているわけではないからどちらが正しいかなどは言えないが、田舎町の凶悪犯罪という雰囲気はこちらの方が伝わってきたように思える。それこそポン・ジュノ『殺人の追憶』のアメリカ版的雰囲気は本作に感じたものである。(と言ってもどちらの『ゾディアック』もあれほど面白くはない。まったく『殺人の追憶』というのは他にない傑作だと思う)
制作費というのはあまりかかってないほうが結構面白い映画ができてしまう気がするのだがどうだろうか。

無論フィンチャーも楽しませてもらったのでいけないことはないのだが、こちらの時間と出来ばえでも十分面白いしそんなに物凄い差があっただろうか、とさえ思ってしまうのである。
あちらはグレイスミス氏の原作があり、こちらは多分そういうものがないと思うのだが同じ事件を同じように扱っていてもこのように脚本と演出で違ってくるのが興味深い。
その上、時折時事ネタを入れてその時代に何が起きていたかを知らせてくれる。

あちらでは様々な登場人物が事件によって苦悩し道をはずしていく様が描かれているようにここでは主役の警視が家庭を犠牲にしていく。その様子はグレイスミスが人のいい感じであったのに対しかなり落ち込むものであった。しかもあちらは結果的に大金を手にするが本作での警視は叱責を受けておしまいという悲惨さである。

結末に変わりはないので無論未解決のままなのだが、事件の出し方、道のりは随分違う印象がある。
殺人場面は残酷性を抑えていたのにこちらの方が怖いようであった。特に暗闇でなぜ正確に射殺できたのかという答えなど不気味なものがある。

逐一比較して本作の方がよかった、といい続けていてもしょうがないが結局映画の一般評価の差というのは制作費と宣伝費の違いなのだなと改めて納得したのである。
気になったのは警視の息子があまりにも意味ありげなので事件を解決してしまうのか?と思えてしまったことだ(まさか!)
資料を集め、小さいながらに「犯人はやって来たのではなくずっとここにいたのかもしれない」などと言ったりする。
凄くパパ思いなのにパパはあまり気づいていなくてかわいそうである。もう少しこの子の視点で描けたらもっとよかったのかもしれない。
グレイスミスは我が子をバスに乗せなかったのにこの子はバスに乗らなければいけなかった。ぞっとする場面だ。

監督:アレクサンダー・バークレー 出演:ジャスティン・チェンバース ロビン・タネイ ロリー・カルキン ウィリアム・メイポーザー ブラッド・ウィリアム・ヘンケ フィリップ・ベイカー・ホール
2005年アメリカ


ラベル:犯罪
posted by フェイユイ at 21:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ジェイク好きなだけで観に行ってしまった作品ですが、見比べの要素は様々ですね
ただ、「翌年」に同じ題材を使って作れるって言うのが凄いと思う
Posted by kimchoco at 2007年11月15日 10:05
私は低予算映画をつい応援したくなるのであえてこういう風に書いてしまったというのは本音ですが(笑)この映画を過大に期待して観られると困ってしまうかもしれません。でも少ない制作費としては大変よくできていたと思います。

もうひとつの『ゾディアック』に書いてますがジェイクはとてもよかったと思います。私としてはますますあれで好きになってしまいました。『ブロークバック』の彼しか知らなかったのですが色んな役ができる人なんだなと感じました。今後楽しみです。
Posted by フェイユイ at 2007年11月15日 13:11
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