映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年11月18日

『インビジブル・ウェーブ』ペンエーグ・ラッタナルアーン

invisible-vcd-hk.jpgInvisible Waves.jpgインビジブルウェーブ.jpg
Invisible Waves

とても不思議な味わいのある映画でクリストファー・ドイルの映像とも相まって楽しめた。

粗筋だけを言ってしまえば不倫と殺人と復讐でさほど面白みもない気がするが、なぜか展開は思ったとおりにはいかなくて妙な具合にばかりなっていく。
香港でボスの妻と不倫関係にありながら殺害命令を受け、タイ・プーケットへ逃亡する日本人キョウジ。タイへ向かう船の自室が情けなく酷くて灯りは点いたり消えたり、シャワーから突然水が噴射したり、それまでが思い切りシリアスだったのでおかしくて噴出してしまった。演じている浅野忠信はいつもどおり力の抜け切った自然な演技で一体演技なのか地なのか判らないくらいである。ここまで力の抜けた話し方をする人もあまりいない気がする。
部屋は轟音が響くので耳栓が絶対不可欠。空気孔からはもうもうと煙が入ってくる。しかも中にいるのに何者かに部屋の鍵をかけられ外に出られなくなってしまう。
すべてが淡々と静かに進んでいくのだが、一体何なのか、誰の仕業なのか判らない。

謎の坊さんに香港人エリック・ツァン、旅の途中で出会う赤ん坊連れの若い女性に韓国人カン・へギョン。タイで助っ人として現れる日本人に光石研という多国籍映画。

浅野の独特のおかし味のある演技と光石研のうるさいけどなんだか悲しさがある佇まいを楽しむ。
同監督の『地球で最後のふたり』でも主人公の男(浅野忠信)は自殺志願であったのだが、本作でも主人公は最後に「本当に死ぬべきはどちらか」と考え自らの死を許容してしまうのだ。
正直そういう考え方は素直に頷けないのだが、仏教的自己犠牲がこういう形で表現されているのかもしれない。

そういえば昨日記事を書いたガス・ヴァン・サント『ラストデイズ』とイメージとしては殆ど同じ映画である。
ここでも主人公は生きていても死んでいるようなものであった。ずっと顔色が悪く人との会話がうまくいっていない。なぜかぼんやりとした意識のまま延々と彷徨い続ける。片方は川へ入り、こちらは海である。ここでも死を目前にした水の儀式があるわけだ。一体何故死の前には水にはいるんだろう?
死を前にしても「生きていたい」という渇望がない。
期せずして同じテーマの映画を続けて観てしまったようだ。好きではない、などと言いながらやはり自分はどこか「死」というものを考えたいという気持ちがあるからなんだろう。
本作は『ラストデイズ』よりユーモアもアクションもあるのだが(『ラストデイズ』も結構おかしかったけど)物語性がいくらかこちらがあるので主人公への悲しさもより伝わりやすいのではないだろうか。
奇妙に面白い体験であった。

監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン 撮影:クリストファー・ドイル 出演:浅野忠信 カン・ヘジョン エリック・ツァン 光石研 マリア・コルデーロ
2006年 / タイ/オランダ/香港/韓国





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posted by フェイユイ at 22:58| Comment(3) | TrackBack(0) | 東南アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
丁度今週一週間の限定で劇場公開されてるんですね
気になって他のレビューを読んで見たんですが、ちょっと惹かれる内容です
Posted by kimchoco at 2007年11月19日 01:09
見たい!です。
この暗湧という題名にまず引かれちゃいましたね。浅野さんに光石さん、そしてなにより、エリック・ツァン。このcasting最高ですね!フェイ・ウォンが暗湧という歌を昔歌っていて、その永遠に続くようなどんよりとした空と心を歌っていたので(私の勝手な解釈ですけど)、フェイユイさんのこの映画のレビューを読んで、なんとなくこの映画の雰囲気がつかめるような…浅野さんを起用する段階でアンニュイものを感じますけどね(笑)
おまけにクリストファー・ドイルとくればもう香港迷としたら見ずにいれない映画ですね〜といいつつ『2046』まだ見てない…

『ラストデイズ』は気になりながらもまだ未見です。
久々に見たい!って思いました。ゲイビイカ外で…(笑)
ガス・バン・サント原作だったかな〜これから撮影されるそうですが、ハーベイ・ミルクの伝記みたいな映画を12月から撮影に取り掛かるそうです。ショーン・ペンが彼役、その暗殺者役が…なんと、マット・デイモン。見ごたえありそうですよね〜
まだこれからの話だから変更あったりするのかな〜長くなってすいません。
Posted by まもう at 2007年11月19日 06:57
>kimchocoさん
今公開されてるのですか?なんだか不思議ですね。これはなかなか面白い作品でしたよ。

>まもうさん
『暗湧』というタイトルにそんな深い意味があったとは!うーむ、教えてくださってありがとう。余計この映画がよく思えてきました!そういう雰囲気が目的ならまさに観る価値ありと思います。

『ラストデイズ』もお勧め。
主人公ではないですがゲイシーンもあります美形ですよ(どういうお勧めだ^^;)
ゲイの権利活動家ハーヴェイ・バーナード・ミルクの伝記映画についてはマット・デイモンの記事でちょこっと書いたんですが、勿論楽しみです!!!マットの変更がないことを祈ります(笑)
Posted by フェイユイ at 2007年11月19日 10:51
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