映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年11月21日

『サイコ (1998)』ガス・ヴァン・サント

サント・サイコ.jpg

ヒッチコックのオリジナルと全く変わらないリメイク、と言われていて、一体何故そういうものを作ってしまったのか、リメイクってあまり好きではないし、と思いつつも気になって観てしまった。

まず思ったのはやはり面白い、ということ。大体脚本がよくてヒッチコックの演出を忠実に再現したのだから面白くないわけがない。悪くなりようがないほどきちんとリメイクされている。並べて観たわけではないが今年最初にオリジナルを観ていてさすがに記憶力の悪い私でも少しは覚えている。無論、そっくりそのままといわれるには小さな所は色々変わっているのも判る。
では何故これをリメイクしたのか、ということになるとまずすぐにはわからない。ボーナスとしてついていたメイキングを観ればガス・ヴァン・サント監督の気持ちが多少わかる。
映画会社はいつも企画としてリメイクをさせたがるのだが、どうせリメイクをやるなら聖域とされている名作をやりたかった、というもの。しかもこの作品は完璧で変えてしまう余地もない。それで誰も触れることのできないこの作品を自ら何の変更もせずリメイクしたということである。
この説明で頷ける人もいるだろうし、ますます困惑し納得できない人もいるだろう。
名作とはリメイクされていくものでまた3百年後にリメイクされるだろう。そのうちの一つであるということらしい。
とりあえず非常に面白く観れたし、ガス・ヴァン・サントだからこそ、と思える部分もあった。

オリジナル『サイコ』の感想記事は『変態村』と比較しつつ書いている。というのは『変態村』の方は『サイコ』の設定を大いに利用しながら新たな物語にしている作品だからである。あちらはリメイクといわれる範疇ではなくリスペクトして作り出した、という作品だろう。
『変態村』を観る時も『サイコ』が頭に入っていれば随分また面白みが加わるのではないかと思う。

そっくりとはいえ絶対違うのは役者である。
一番の違いは何と言ってもアンソニー・パーキンスが演じたモーテルの管理人である。パーキンスは内向的なイメージのあるほっそりとした知的な青年が怖ろしい本質を持つという役でこれ以上ないほどの印象を残している。
『サイコ』イコールパーキンスなわけで彼に代わる役をどう表すのか、これもそっくりなのか、と思いきや登場したのは体の大きな短髪の男で繊細なオリジナルと大きく変わっている。
だが、アメリカの田舎町に住む男としてはむしろこちらのイメージの方がぴったりなのかもしれない。女だけでなく男も刺し殺し、その死体を抱えて葬るにはこの体の主のほうが頷ける。

『サイコ』という作品は殺人者がマザコンであり女装癖があり内向的でホモセクシュアルな雰囲気がひそかに感じられるものだが脚本家の方は「後からそういうことを指摘されたが当時は匂わせる程度でそういうことは描けなかったのだ」とメイキングで言われていてなるほど、と思った。サント監督ならそういう嗜好を強く出すこともできたのだろうがあえてそのまま撮ったのはやはりオリジナルに対する尊敬なのだろうか。(『変態村』ではその部分が強烈に描かれているが)
とはいえ、サント・リメイク『サイコ』ではどうしてもサントの作品だという意識が働いてそういう目で観てしまう。
殺されてしまう女性を演じたアン・ヘッシュは金色の髪がとても短くスレンダーで胸も小さいのでまるで少年のようである。
ヴィンス・ヴォーンは大柄な体が却ってゲイ的に感じられるし金髪のかつらをかぶって女装するのはどうもサント監督の趣味としか思えない。こういう下賤な目で観てはいけないのかもしれないが、最初からそのつもりで観ていたのでしょうがない。
ヴィゴ・モーテンセンは「ディラン&キャサリン」のディランのように見えておかしくてしょうがなかった。これは別にサント監督のでいではない。

このDVDに関してはメイキングが非常に面白かったのではないだろうか。メイキングで納得されられていいのかどうかわからないが、オリジナルに対する尊敬とスタッフの情熱が伝わってきて楽しかった。
リメイクに反感を持っていた自分だが、こういう気持ちのものなら作られていいのではないか、と思わされたメイキングであった。

監督:ガス・ヴァン・サント 撮影:クリストファー・ドイル 出演:ヴィンス・ヴォーン アン・ヘッシュ ジュリアン・ムーア ヴィゴ・モーテンセン ウィリアム・H・メイシー ロバート・フォスター
1998年アメリカ


ラベル:犯罪 サスペンス
posted by フェイユイ at 23:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も少しまたガス・ヴァン・サントづいてます。
メイキング。特典の目的はこれです。大好きです。先日、買った『パリジュテーム』DVDの特典を本編に遅れること一ヶ月位でやっと観ましたら、このDVD特典は映画と同じく各5分位のメイキングが18作品全部☆にあり(そりゃそうだ)面白いの何の〜〜!!^^vやはり、本編が面白いとメイキングも面白いっ!ですし、役者はスタッフの本音や背景の事柄につき知ることができるし。〜全部観て感じたのは、映画監督の作品へのアプローチの仕方って、当たり前のことなんですが、ほんとうに各人さまざま違う☆ということ。カメラマン出身だからこその創り方であったり(クリストファー・ドイル)編集を始めから念頭においていたり(オリバー・シュミッツ;だからあんなに完成度が高い!)ハンディカメラを使う意味を深く理解していたり(オリビエ・アサヤス)等等・・メイキングを観ることでまた一段と『パリジュテ』を理解し愛することが出来ました◎^^
・・ガス監督の『マレ地区』ですが(ざっと)、フェイユイさんの気になる部分の謎解きはなし(笑)。でも現場の雰囲気がよく判りゾクゾク。エリ役のイライアス君お話してました〜彼は映画では台詞ほとんどなかったわけですがここでは沢山インタに応えてて非常に可愛い!(笑)とても物静かな表情&ソフトないい声^^アメリカ映画の現場と違いとても静かで集中できる現場だ、と。ミステリアスな役を貰え嬉しいと。ギャスパーとは言葉は通じないが完全に言っていることは理解できた、と。・・彼、あの印刷所?(マレ区の本当の店)内の(小ぢんまりした空間でリラックスかつ集中した現場の雰囲気が心地よかったのでしょう)壁際のソファで眠ってました(^^)アーティスティックな緊張感と現場の甘やかさが伝わってきました。マリアンヌ・フェイスフルは“なんか仕事じゃないみたいだワ〜”というと“いいことさ”と誰かが応える〜^^ギャスパーもイイ表情。自分用ビデオ回してた。台詞もガス監督から“自由に変えていい。テーマが変わっても構わない”と言われたそうで、調度私はさっき『ラストデイズ』メイキングも見ていたのですがやはりガス監督はここでもそのように。。『マレ地区』メイキング最後はガス監督が手で丸くレンズを作り覗く姿で〆られてました。^^(他の作品もそれぞれいちいち感動☆でも膨大な量になりますのでやめますが^^;非常に面白かったです)。
Posted by フラン at 2007年11月22日 12:23
おお!なんとも細やかに説明してくださってありがとうございます。しかもイライアス君情報(笑)
そうですか〜可愛かったですか〜。ソファで眠ってるって子供みたいですねーむふ。
『ラストデイズ』は特に台本はないといっていい状態で出演者に演技は任せていたとか。
それであれが出来上がるって。どういうことなんでしょうかー???
不思議です。
Posted by フェイユイ at 2007年11月23日 00:03
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