

TIME
観ていて「これは監督自身のことを描いたわけではないのかな」といつもながら穿った見方をしてしまった。
というのは、無論これはギドク監督お得意の異常な形のラブ・ストーリーであるのだが「自分を愛してくれていたはずの人が他の人に心変わりしていく。いつも同じ顔じゃ飽きられる。これ以上美しくはなれないけど、違う顔に変わりたい」というこの物語がまるで今回のギドク監督自身の心の声のように感じられたからだ。
本作は今までのギドク監督作品とは非常に異なった印象がある。普通の生活をしている若い男女が登場人物であり、まるでギドク作品ではないかのように大量の台詞で心の中が説明されていく。
だがどうなんだろう。ギドク監督を好きだった人たちほど「以前の方がよかった(セヒのほうがよかった)」と言われてしまうのではないか。
ギドク監督が皆がそう思うところまで計算してこの映画を作ったのだとしたら。
でもギドク監督はセヒより幸運なはずである。整形してしまった顔と違い監督はまた元の様な映画を作ることはできるのだから。
この思い付きがあたってるかどうかは判らない。インタビューでも(私が見た数少ないものでは)監督は「永遠の愛はないと言うことを描きたかった」とだけしか言われてないようだし。そんなひっかけというか遊びというか、で自分の心を表現しているのかは想像がつかない。
ただもしこの考えがあたっているなら整形した(他人の好みに合わせて見せた)スェヒ(ギドク監督)が「これで願いはかなったのに、こんなに悲しい」と泣きだしてしまうのもおかしいような悲しいような気持ちになってしまう。
今までとは違うとは言っても整形したスェヒとする前のセヒが出会うという時間の交錯や広げた手の形の彫刻が海の中に入ってしまう美しさ、その階段の先が天に続くイメージはギドク監督らしい。
またジウがパソコンで編集しているのがギドク監督の『3-IRON(うつせみ)』という遊びが楽しい。
もしかしたらこの映画はホラーコメディなのかもしれない。
それにしてもここでもまたギドク監督は「女性の目」になっている。いつも私はギドク氏は男性役ではなく女性側に立っている、と思うのだが、監督自身はマッチョなイメージの方だけにいつも不思議である。
監督/脚本:キム・ギドク 出演:ソン・ヒョナ ハ・ジョンウ パク・チヨン 杉野希妃 キム・ソンミン
2006年 / 韓国/日本
ラベル:ラブ・ストーリー
この作品をギドク自身だという捉え方は面白いですね。
確かに、彼自身が「寡黙な映画は飽きた!」と思ったのかも(笑)
でも、『息』ではまたチャン・チェンくん一言もセリフがないとか・・・。
う〜ん、早く観たいです。超期待!
ギドク、やっぱり大好きです。ではでは〜。
私もですが^^;
ギドク監督が飽きたんじゃなく、周りから「変わったほうがいい(他の人のように作ったがいい)」などと言われて頭にきて「変わってみたら前のほうがよかった、って言うんだろ!」みたいな気持ちで作ったんじゃないかと(笑)そんなことで映画一本作るってことはないでしょうけど〜。
やはり『息』気になりますね!