映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年12月12日

『冷たい血 AN OBSESSION 』青山真治

冷たい血.jpg

今まで観て来たどの作品も現在起きている題材を扱いながら問題提議をし、真摯に答えていく、という非常に生真面目な性格を見出してしまう。やや真剣すぎるかな、と思いながらもやはり面白く観てしまった。

「愛を証明できるか」という課題を真正面に掲げている。刑事である嵯峨は「男は仕事だけしていればいい。女はそれを理解し補助すべきだ」という判りやすいマチズモである。新興宗教家殺害事件犯を追う途中で銃弾を受け片肺を取り除いた後、辞職する。体も心も空洞になってしまったような感覚に陥ってしまうのだ。
そして彼は「真実と事実の違い」「愛とは何か」について考え始めるのだった。

人を殺していくという不可思議な新興宗教団体が町を横行する中で嵯峨は空洞になった胸を痛みで押さえながら走り続ける。見つからない答えを探し求めながら。

戸惑い、苦悩しながらも生きてきた重みのある嵯峨・リエの二人と比べ、「愛する事の証明は殺す事」と互いに信じている若い恋人たちは二人とも人形のように綺麗で生きている実感がない。それぞれの組み合わせの配役をこのようにしたのはそういった意味合いがあるのだろう。

問題が掲げられ、嵯峨が電話でリエにきちんと返事を伝える、という形になっているので大変わかりやすい「人を愛する証明は二つある。一つは殺す事で、もう一つは一生添い遂げる事」
嵯峨は刑事をやめて別の仕事に就きなおしているわけだから、刑事では愛を貫く事は難しいということか(うそ)

最後にジャンプを繰り返し(といっても全然飛べてないところがいい)こちらに銃口を向ける嵯峨は心の空洞も癒えたのだろう。

作品を幾つか観ていくと作者の持つ特異性というのが見えてきて面白いものだ。
本作でも主人公は胸を撃たれたために咳き込んだり痛みに胸を押さえたりする。
青山監督は咳、光に弱い、など主人公が体に異変を感じる設定を好んでいるようだ。
ここにも斉藤陽一郎が出演。いつも気弱で余計なことを話してしまう嫌な奴という役。そしていつも殴られている。必ず嫌われ役として登場するのが面白い。
柳ユーレイが出演時間は僅かながら印象的である。「あるものはない。ないものはある」

島野がつぶやく言葉「馬をひけ!代わりに俺の王国をくれてやる」シェイクスピア『リチャード3世』の名台詞。人殺しの言葉でもある。

ここでもいくつか謎が残る。
誰が何故シクラメンを贈ったのか。その意味は?

監督:青山真治 出演:石橋凌 鈴木一真 遠山景織子 永島暎子 柳ユーレイ 諏訪太朗 斉藤陽一郎
1997年 / 日本


posted by フェイユイ at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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