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2007年12月14日

『SWEET SIXTEEN』と『大人は判ってくれない』

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最初この映画を観てどうしようもないほどの衝撃を覚えた。再度観た今回、リアムの苦しみ、悲しみが余計に伝わってきた。
昨日『大人は判ってくれない』を観てどうしても『SWEET SIXTEEN』を観なおしてみたくなったのだ。
確かにこの二つの作品はよく似ている。義父がいるところ(リアムのいは義父でもないようだが)次第に悪い道にはまり込んでいくところ、親友が助けてくれるところ、そして最後の場面。
逆に最も違うと感じるのは主人公の母親への愛情なのだ。『大人は判ってくれない』では心底自分を愛してくれない母親に対し、もうアントワーヌの心は冷め切ってしまっているように感じる。鑑別所でも友人ルネが訪ねてきたのを見た時は凄く喜んだアントワーヌが母親の姿には固くなってしまう。アントワーヌが最後に見せる虚脱感は誰も家族が愛してくれていない寂しさだ。
リアムは母親を深く愛しすぎるほど愛している。彼が悪い事をするのはすべて母親を喜ばせたいという一心からだけなのだ。母親は彼に対して冷たくはないが、気持ちはリアムから離れてしまっている。彼女が本当に欲しているのはリアムが嫌っているヤク中のスタンなんかの男だけなのだが、リアムはそれを気づかない。気づきたくないのかもしれない。だが彼にはもう一人彼のことを本当に心配してくれる姉と甥っ子がいる。リアムがアントワーヌより少しだけ救われるのは彼女達がまだ彼を愛してくれているからだ。
アントワーヌもリアムも欲しがっていたのは親からの愛情だけだった。ただそれだけのものを彼らは与えられる事がなかったのだ。
その事実を突きつけられた時、アントワーヌは鑑別所を脱走し、リアムはそれを教えた男スタンをナイフで刺してしまう。それだけは聞きたくなかった事実だったのだから。
その後、二人は海辺へと走っていく。相手のいない孤独なアントワーヌは一人海の中にはいり悲しみを湛えた目でこちらを見る。その目ほど悲しいものはない。
リアムは姉からの電話を受け取り皆が探していることを伝える。リアムはもうバッテリーが切れそうだ、と言い茫然と波打ち際まで歩いて行く。
もう何も残っていないアントワーヌよりもリアムにはまだ何かできるような希望を抱かせてくれる。
どちらが凄いかというようなことではなく、二つの作品ともに私は他にないほどの強い悲しみと愛情を持ってしまう。

二人の少年どちらにも深いつながりのある親友がいてくれることは本当に嬉しいことだ。
両方とも共に悪だくみをし、そして窮地に立った時は助けに来てくれるありがたい友人である。
この物語の間だけではなくこの後もずっと友人でいてくれるような相棒なのだ。

非常にクールで主人公の心理描写なしに映像を作り上げたトリュフォーの『大人は判ってくれない』に対し『スイート・シックスティーン』では台詞でも表情でもたっぷりとリアムの心情を表現している。そのために彼の母親への愛情、それを失った時の悲しみが痛烈に伝わってくる。ピンボールとの友情と仲違いも心に響いてくる。リアムが襲われたのを見て助けようと飛び出して行くピンボールの姿、リアムに裏切られたと思い自分の顔をナイフで傷つけたピンボールを見て驚くリアムの悲しげな表情も印象的である。
そういった表現方法の違いも興味深くまたどちらも素晴らしいと思ってしまう。

この二つの作品のどちらかを選ぶという事はできそうにない。
感情表現の豊かな分『スイートシックスティーン』が判りやすいということはあるかもしれないがクールな『大人は判ってくれない』がかっこいいとも思える。
ラストシーンも似てはいるけどこちらは際立った演出の『大人は判ってくれない』のすぱりとした切り口が印象的ではあるだろうか。

主人公の少年もどちらともいえないくらい両方とも可愛らしい。さすがにパリっ子で金持ちではないのだけどなんともおしゃれな印象のアントワーヌといかにも田舎者じみたダサい格好のリアム、どちらも好きなのだ。アントワーヌはしゃべり方も可愛かった気がするが、リアムの英語は物凄く聞きざわりが酷いのではなかろうか。英語の訛りなど全くわからないが彼の言葉はかなり田舎っぽいように思えるのだがどうなのだろう。その辺も含めて可愛らしく思ってしまう。

ラストシーンだけではなく全体の物語が非常に似ていると思えた『SWEET SIXTEEN 』と『大人は判ってくれない』を並べて考えてみた。『SWEET SIXTEEN 』のリアム・ピンボールの関係は北野武『キッズ・リターン』から影響を受けたということらしくなるほどと思えた。あの作品も大好きなのである。

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ラベル:少年期
posted by フェイユイ at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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