映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年12月23日

『マイ・プライベート・アイダホ』ガス・ヴァン・サント

My Own Private Idaho.jpgpieta.jpg
My Own Private Idaho

この作品も思いいれの強いものでとても簡単に書けそうにもない。明日もう一度観ようと思っているが今回久し振りに観た感想をおもいつくまま書いてみたい。

ぐっと心をつかまれてしまうのはやはりリヴァー・フェニックスの演技とその繊細な美しさである。美しさとしっても、ゲイ相手の男娼でストリートキッドであり薄汚れ着たきりの服装でいつもぼさぼさとした髪をしてその目は荒々しさとか弱さを併せ持っているといった風情である。しかも彼はナルコレプシーという持病を抱えている。それは強い眠気に襲われるというものなのだが、彼が過度の緊張を覚えた時突如として現れるので非常に危険な症状なのである。

彼は3年半越しの親友スコットがいるのだが彼は市長の息子で数日後の21歳の誕生日にはには莫大な財産がはいることになっている。リヴァー演じるマイクはスコットに対し友情以上の想いを持っているのだった。

マイクは行方知らずの母親の思い出をいつも追いかけている。思うだけでなく母親に会おうと彼女の居場所を探し始めるのだ。

マイクがナルコレプシーで眠ってしまった時見る夢はいつも自分が幼い時まだ母親のそばにいるイメージ、そして母親の膝で眠る現在の自分のイメージである。
ナルコレプシーといういつ夢の中に入ってしまうか判らない病気のせいでマイクの存在は非常に不安定なものである。彼には絶対に庇護者が必要なのである。
その庇護者になってくれたのがスコットであった。彼は眠り込んでしまったマイクを自分の膝にのせて抱き上げていてくれた。その様子はまるで磔刑に処せられ死についたキリストを抱いた聖母の絵画=『ピエタ』のようである。母を思わせるその優しさゆえにマイクはスコットに母への思いのような愛を覚えたのではなかったか。唐突に母がイタリアにいる、という筋書きもピエタのイメージから引き出されたもののように思える。

物語の半ば、焚き火をしながらマイクとスコットが語り合う場面がある。このシーンは後の『ジェリー』と重ね合わせられる(また『ラストデイズ』では一人きりのシーンになる)印象的で美しく悲しい場面である。
ただ金の為に男色行為をし続けたいたマイクがスコットに好きだと打ち明ける。スコットは「男とセックスするのは間違っている。金の為だけにやっていることだ」と言い返す。思いが通じなかったマイクはうまい言葉を見つけることもできず「俺は金の為じゃなくても愛することができる。・・・もういいんだ。でも君がすきだ」と自分の膝を抱え込む。それを見たスコットはややうんざりした様子ながら横たわる自分の脇の地面を叩きながら「ここへこいよ」と言う。意地を張ることもせず、素直にスコットの傍にまるで猫の子のように入り込みながら寄り添うマイクの気持ちが痛いほど伝わってくる。

この映画ではスコットは裏切り者のようで冷酷に見える。だが別の作品ならば強盗、麻薬、買春などを繰り返すならず者も生活から更生した立派な話だと言ってもいいのだ。
スコットは女性に恋をしてマイクと別れ、堕落した生活から足を洗ってまともな大人へと成長していくのである。
一方のマイクはそれ以後も同じように広大な平野を彷徨い続け、ある人からは大事なものを奪われ、ある人からは助けられながら子供時代から抜けきれないでいる。彼は一生子供のままで危ういままに歩き続けていくのだろう。どこまで続くかわからないうねうねとした道路が彼の歩かねばならない道なのだ。その道は殴られているようにも見え、スマイルのようにも見えるのだ。

リヴァーが若くして亡くなってしまったことは悲しい。
この作品だけでも彼がどんなに素晴らしい感性と人の目を惹かずにはおかない類稀な美貌を持っていたかがわかる。
悲しい想いを湛えている眼差しは他の何にも代えられない。
スコットを演じたキアヌ・リーブスもほっそりした面立ちが美しい。

そして何と言っても私が大好きなのは二人がタンデムでバイクを走らせる場面。
運転するキアヌの後ろに跨るリヴァーという絵はバイクシーン好きには垂涎なのである。
物凄いスピードで街中を走る、またはホテルに横付けする、建物の中まで入り込んで止める瞬間リヴァーが飛び降りるシーンなど見惚れずにはいられない。いつまでも彼らがタンデムで走り続けられたら、と思わずにはいられなかったのだった。

思いが溢れるこの作品。明日また鑑賞して感じたことを書いてみようと思う。

監督:ガス・ヴァン・サント 出演:リヴァー・フェニックス、キアヌ・リーブス
1991年アメリカ


ラベル:同性愛 青春
posted by フェイユイ at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。