映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年12月23日

『マイ・プライベート・アイダホ』今夜も

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My Own Private Idaho

『マイプライベート・アイダホ』はその後の作品『ジェリー』『エレファント』『ラストデイズ』などに比べるときちっとした筋立てがあり判りやすい作品になっている。とはいえ、そこここに見られる演出はやはりガス監督らしい好みが表現されているのだ。

冒頭部分にこの物語のすべてが現れている。前方と後方にどこまでも続く道。アメリカの広大な平原には主人公マイクだけが佇んでいる。マイクはその道が殴られた人の顔のようだと言う。逃げ去るウサギを見て「逃げても駄目だ。俺と同じさ」とつぶやくのだ(ちなみに中国語では兎子はゲイの意味だが)
手持ちカメラがマイクの不安定な状態を示しているようだ。ナルコレプシーの彼は唐突に道に倒れてしまう。

夢の中でマイクは母親の膝の上で眠っている「何も心配しないで」と優しく声をかけられながら。その膝は彼にとって安らぎの場所に違いない。怖ろしいナルコレプシーの発作に襲われた時に彼は安らぎを観ることができるのだ。

時間の経過を示す空と雲の動きが美しい。UFOも凄い勢いで飛んでいく。

スコットが登場する。彼らが店頭に並ぶゲイ雑誌のカバーボーイになってしゃべりだす、というちょっとおかしな演出がなされる。
スコットは他のストリートキッズとは違い市長の跡取り息子であり、もうじき莫大な財産を受け継ぐことが語られる。彼は父親に反発してゲイ売春や麻薬、強盗をしているにすぎないのだ。
そしてスコットが父親より愛するという男・ボブが登場する。ボブというキャラクターはオーソン・ウェルズの『フォルスタッフ』がモデルらしく(自分は未見だが)でっぷりと太って従者を連れ確かにシェイクスピア喜劇のようなエピソードが展開される。
スコットはボブに「21歳の誕生日になったら生まれ変わる。親は放蕩息子が更生した方が喜ぶものさ」と言う。スコットの変身は最初から彼の目論見なのである。

焚き火の場面は何度観ても素晴らしい。
すれ違う二人の心を焚き火が映し出していく。

イタリア旅行で二人の仲は決定的なものとなる。スコットがイタリア女性と恋に落ちるのだ。マイクはスコットに取り残され一人でアメリカへと帰る。
イタリア女性とアメリカへ帰ったスコットは父の死により遺産を受け継ぎ、彼の予定通りもとの生活に戻ったのだ。

以前観た時はマイクを放ってしまい、一人だけ裕福な生活に戻ったスコットにたまらない寂しさを感じたものだ。
だが今見返すとそれはスコットの生き方であり、どうしようもないことだと思えてしまう。
物語のラストにマイクの持ち物を盗む者もいるのだが、彼を(多分)助けようとするものがいてなにかしら希望を抱かせる。ほんのかすかな希望のようではあるが、それでも彼は果てしない道を歩いていこうとしているのだ。

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ラベル:同性愛 青春
posted by フェイユイ at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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