映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年12月26日

『インプリント 〜ぼっけえ、きょうてえ〜 』三池崇史

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Imprint

久し振りに食いつくようにして観てしまった。
三池監督のは凄く共鳴できるものとそうでもないものがあるが(ってどの監督でもそうだろうが)これは最高に面白いしぎゅっと締まった上手い出来栄えの作品だ。
華やかに見える遊郭も寒く侘しい日本独特の田舎の情景も地獄であることに変わりはないという怖ろしい比喩。
字幕ではついに「間引き」という訳が書かれていなかったような。うっすらと知ってはいても表向きには語り継がれる事はない隠された事実。
日本のホラーには“血の呪い”というアイテムが頻繁に使われるようだ。この作品では兄と妹の禁じられた関係が繰り返し行われ、またそこから生まれた姉と妹の因果という呪縛が語られていく。
またこの物語には「優しくしてはいけない」という教訓が含まれているようだ。
それは例えていえば「同情するととり憑かれる」という下等霊に対する教えのようなものである(かなり怖ろしいことを言ってる気がする)小さい頃はそういうものが寄り付かないように唾を吐いたものだが小桃は「鬼である女」にうっかり優しくしてしまったがためにとり憑かれてしまったのだ。とり憑いたのは霊ではなく生きた女の怨念だったが。
この女に対して「可哀想に」などと思ったら最後とり憑かれそうで絶対書くわけにいかない。優しくしてはいけないのだ。(そう言ってもなお可哀想に思う優しき人もいるかもしれないが、殺されてしまう覚悟をしなければいけないようだ)

冒頭の遊郭へ船で向かう一行の前に孕んだ女の水死体が漂ってくるところから風情たっぷりである。
船がすんでのところで沈みそうなのも恐怖感をそそる。船を操る水先案内人によって客は鬼の住む遊郭島へたどり着く。

日本の遊郭で遊女達が太い柵の向こう側から手を出して手招きするのは何故こうも楽しいのか(女の子だったら“遊び”でやったことあるでしょう、そういう場所で)
遣り手婆さんの指輪がなくなっての拷問などいかにも遊郭らしい展開である(しかも拷問女が原作者・岩井志麻子氏とは。怖ろしい)
この拷問シーンは原作にはない三池監督ならではの思いつきなのだろうがさすがに痛そうだが、吊られた格好など絵画の如く綺麗であった。

アメリカ資本のためか小桃を尋ねて遊郭を訪れる男がアメリカ人記者となっている。そのことが却って不思議な世界を作り上げているし、日本人の髪色が青や赤や金髪などになり三味線を弾く女の横にいかにも電気の回り灯籠が置かれていたり(これアメリカ人にはわからないよな)と奇妙な雰囲気が濛々とたちこめているのである。

アメリカ人記者は最後におかしくなってしまうがこれはどうこう言い訳しても小桃を早く迎えに来ず彼女に儚い望みを抱かせた罰だということなのだろうか。

監督:三池崇史 出演:工藤夕貴 ビリー・ドラゴ 美知枝 根岸季衣 岩井志麻子
2005年 / アメリカ

世界のホラー映画監督13人の名匠を集めて作られた「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズの中のひとつで、米ケーブルテレビ(SHOWTIME)用に製作された映画なのにも関わらず、本作だけアメリカで放映されなかったというのは・・・まあわからなくもない。日本でも数箇所でしか上映されていないらしく勿体ないがDVDで淫靡に楽しんでいただきたいものである。

言っても詮無いことであるがせっかくおもしろい「ぼっけえ、きょうてい」という響きが言葉として発せられないのは残念である。反面、日本舞台で全部英語というのはちょっと面白い。『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』早く観たい。


ラベル:ホラー
posted by フェイユイ at 22:45| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本映画(最近の)はあまりみない私が出て来て物申すのは申し訳ないのですが・・(この映画は未見)原作を読んだのです。「ぼっけえ、きょうてえ」そのものを映画化したのではないのですね?・・この映画自体を知りませんでしたし全編英語とは。;;
原作は恐いものみたさで読みましたが、併録の他短編も合わせて、全体的に不思議で暗くてでもちょっぴり甘い哀愁があって、、岩井志摩子という御人もユニークっぽいですしね。^^;希望的にはせっかく映画化するなら日本で、あの哀感をしっとりと表現する映画であって欲しかったかな。。アメリカのテレビ枠ということならお手軽なホラー映画として創られてしまったのでしょうけれど・・少々残念。フェイユイさんは原作はお読みに・・?
Posted by フラン at 2007年12月27日 11:30
ごめんなさい、私のレビューってワケわかんないですね^^;
いやいや、私も先に原作読んだのですが(本文中僅かに書いてましたが^^;)そのものの映画化です。ただ登場人物が全編英語会話なのです^^;^^;
原作のおどろおどろしさも悲しさも表現されていた、と私は思っているのですが。ただ三池監督作品なので原作にもあった拷問シーンがかなり激しく表現されているのです。その拷問をしてるのが原作者の岩井さんということなのですが。

フランさんに誤解を与えてしまったようなので反省。少し書き直してみます。
ただし映画の賛否は観た人で両極端みたいですので私は大絶賛ですが観てみてください、としかいえないのですが。
拷問シーンを除けば(そしてアメリカ人出演を除けば)原作の雰囲気はあると思います。
Posted by フェイユイ at 2007年12月27日 17:04
分野違いへの書込みになってしまい恐縮なのですが。。今年もあと三日。明後日以降年末年始は実家への移動でパソに近付けませんので今ご挨拶を。。
昨年のマットから引き続き、今年もフェイユイさんの沢山の素敵なレビューから映画鑑賞の愉しみを繋げていくことが出来ました◎本当にありがとうございました!!^^
中でも『かげろう』『ブロークバックマウンテン』『ラストデイズ』『薔薇の名前』『パリ・ジュテーム』で色々語り合ったこと、私はとても印象深いです。特に『ラストデイズ』のフェイユイさんの読みの深さには感動^^水=川は冥土(日本的;)を現しているのだなと気付かせて貰ったり。『パリジュテ』では互いに好みを確認・指摘し合えたり(笑)・・作品を観たときに全く同じ感じ方ではないからこそ、そこに発見があって面白いですよね。
いつも宿題ではないのですが(笑)ついフェイユイさんに云いたくなってしまってメイワクおかけしています〜勝手に推薦映画の数々。。^^;今年最後の推薦作品がまた出てしまって(笑)・・『ディナーラッシュ』(2001・米)。大変スタイリッシュで面白い映画でしたが何より、チーフシェフ役エドアルド・バレリーニの面差しがあの『SWEET SIXTEEN』リアム☆がそのまま大きくなったみたいにカッコ良かったのです!・・アア今年の〆はこれなのね?☆(笑)と思った次第。そして『薔薇の名前』でお薦めした『月の輝く夜に』にも出演していたダニー・アイエロが主人公なのです^^イタリアン&アメリカンな雰囲気漂う洒落た作品。宜しかったらお気の向いた折にでも。。^^
Posted by フラン at 2007年12月28日 15:14
私こそフランさんの導きで色々深く考える事ができたと思っています。特に『罪の王』の時は一度目の鑑賞だけで終わってたらあの映画に対して申し訳ない感想で終わってしまったんだなー、と思います。新しい感想もフランさんの言葉で導かれたものですしね。

フランさんのお勧めも楽しみです。『ディナーラッシュ』ですか。リアムがそのまま大きくなったと聞いては観ないわけにはいきませんね(笑)
新年あけたら早速観ようと思います。
『月の輝く夜に』も気になっていたのですが、これも是非観たいです。

では、よいお年をお迎えください。
Posted by フェイユイ at 2007年12月28日 21:53
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