映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年01月02日

『ボルベール <帰郷> 』ペドロ・アルモドヴァル

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VOLVER

性というものが絡んでくる時、男に対し女というのはどうしても弱く悲しい存在なのだろうか。だからこそ強く生きていこうとするのかもしれない。
この作品に登場する女性達はまるで牝ライオンの群れのように見える。雄ライオンは種の保存としてしか登場せず、狩り(仕事)も彼女達が行っていく。彼女達は支えあい、助け合いながら共存している。時に信頼し、時に憎みあいながらも。

殺人事件が起きる。血がつながっていないとはいえ、父親うが娘にセックスを強要しようとしたため、娘は包丁でで父親を刺してしまったのだ。
ここで母親であるライムンダは警察に通報することなしに自分で解決しようと考えるのだ。
この作品では事件が起きた時、当たり前のように警察やテレビ報道に訴えられていることを自分たちの事として解決しようとしているのがむしろ思いもよらないことのように感じてしまった。法律としてはそれが正しいのではないのだろうが、娘が防衛のために犯してしまった殺人を母親が意を決して娘を守り抜こうとする姿に誰もが共感してしまうのではなかろうか。法律だけでは守れないものがあるのだ。それは娘の心であり、かつて自分の父親に性を強要され妊娠してしまったライムンダは他の母親以上に娘を守ろうと決心したのだろう。
ライムンダはずっと母親を遠ざけていたのだがそれは自分が父親に強姦され出産したことを気づいてくれない悲しさからなのだ。
またアグスティナが家族の事情をTVで話すという企画を途中で逃げ出してしまうのもTV報道が家族の内部事情をさらけ出してしまうやり方にちょっとした批判をしているようにも思えるのだが。

ライムンダの母親もライムンダも隠し通してきた秘密というのがありいつかそれを打ち明けるのだと言い続ける。
物語の最後でその打ち明ける行為がすぐにもあるだろうと予感させて映画は幕を閉じる。
犯した罪を打ち明けずにはいられない=懺悔をする、という物語になっているのがカソリックであろうスペイン人の映画らしい結末なのではなかろうか。それでも彼女達はいつも優しさのために何らかの秘密を持ち隠し続けていくような気がする。いつか打ち明けようと思いながら。

ライムンダを演じるペネロペ・クルスの美しさに目を奪われずにはいられない。美人というのはこういう女性のことだろうと思ってしまう。
気が強くしっかり者のように思われるライムンダだが小さな頃は甘えんぼだったの、という母親の言葉に涙してしまった。甘えんぼだった彼女が母親から離れてしまうことがどんなに辛かったことか、その為に自分が強くなろうとどんなに決心したことか。
幽霊となってしか生きていく道がなかった母親が逃げて行った娘を見て「あの子は拒絶しなかったわ」という言葉に判っているんだとまた泣けてきた。

精神に異常をきたしてしまうほどの風が吹く村、という場所はその場所だけでなく女が生きていくどの場所でもそうなのかもしれない。
彼女たちは自らの墓を作り死の準備をする。
男達と必ずしも上手くいくとは限らなくとも恋をし、子供を産む。多くの秘密を隠しながら女たちは手を組み生きていこうとする。車で男の死体を運ぶ為、女たちが力を合わせている場面はおかしくも怖ろしい。

ところでライムンダが死体をレストランに運び込んだ時に映画撮影の一行が食事を注文しにくるがライムンダは何故それを引き受けたのだろう。
そのことで死体運搬が遅くなったという支障が出ただけでプラスになることがあったようには思えないのだ(無論、この一行の打ち上げパーティでライムンダがかつて母親に教えてもらったという歌を披露することになりその歌「VOLVER(帰郷)」が素晴らしいのだが)
私はこの30人分の食事の数回分に夫の死体を少しずつ切り分けて入れたのではないかと思っていた。グロテスクな話だがそうでないなら何故このような状態を作ったのか。急速冷凍したのも却って金槌などで死体を壊しやすいのか?と思ったのだが。

性の前で弱者となる女性の3世代に渡る生き方を明るく力強く描いた作品である。

監督:ペドロ・アルモドヴァル 出演:ペネロペ・クルス カルメン・マウラ ローラ・ドゥエニャス ブランカ・ポルティージョ ヨアンナ・コボ
2006年/スペイン

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posted by フェイユイ at 17:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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