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2008年01月16日

『鰐』キム・ギドク

鰐 キム・ギドク.jpg

キム・ギドク初監督作品『鰐』が日本版DVDになったというので観てみた。というのはこの映画ほぼ3年前に韓国版ビデオで観ていたのである。(その時の感想→ 「鰐」キム・ギドク初監督作品・前半 「鰐」後半・タブー )
大体ギドク監督はこの作品からすでに台詞が極端に少ないつまり台詞での説明が少ないのでこういう場合非常に助かるのである。こうやって以前の感想を読んでもそう困ってもいないようだ。
タイトルもそのまま『鰐』で出てるのはむしろ投げやりということなのか。
久し振りに観たがやはりキム・ギドクのギドクらしい毒がどくどく溢れてくるようで(しゃればかり続けてすまん)初っ端からぎとぎと(これも?)と汚らしいのでうれしくなる。
後にグエムルも誕生する漢江はどんよりと澱み、ゴミだらけだ。その淵で生活する老若男女は言わば擬似家族であって血縁関係はない。ワニ兄と呼ばれているヨンペは自らも言っている様に男のクズである。
共に暮らす爺様にも幼い少年にも絶えず横暴な態度で暴力も振るう。漢江に投身自殺しようとした若い女性を助けるが何度も性的暴行を重ねるのだ。少年を使って小金を稼ぎ、うまくいかないとまた暴力で鬱憤を晴らす。そして自分自身もイカサマ賭博に騙され、いんちき商売をしては縄張りを荒したと言われて鼻を切られてしまう。なんとも情けない最低の男なのだ。この前半のヨンペの行動を観ているだけで大概はその下種さにうんざりしてしまうだろう。
ヨンペを演じたチョ・ジェヒョンは後に『悪い男』にも主人公として登場するがすでにこの『鰐』でそのイメージが幾つか表される。
凶暴な男と絶望した女、最初はセックスだけの接触だった彼らがふとしたきっかけで心が通じ合う。ここではいつも横暴なヨンペが傷ついたことで見せた女の同情がヨンペに涙を覚えさせる。
絵を描くのが好きな女に絵の具を買ってきたり絵を褒めたりするようになる。
金持ちでハンサムな恋人に棄てられた女はそんなものは何一つ持っていないが優しい言葉をかけてくれるヨンペにいつしか惹かれていくのだ。
何もかも失い、何も持つものがない二人は水辺で寄り添う(『悪い男』と同じ場面である)
だがこのラストは。水の中の椅子に座って死んでいく、という幻想的で美しい場面ではあるが、生きる価値もない二人がそのまま死んでいく、というラストはいかにもまだ若い時の結末のつけ方と言う気がする。それが『悪い男』で二人はやはり生きる価値もないような人間になってしまっているのだが寄り添って生きていく、というラストへと成長したように思う。

反吐が出そうな男の物語なのだがその心にほんの小さな星のかけらのようなものが光っているのだろうか。

韓国映画界において断絶された一匹狼のようなギドク監督だが、それだけに作品の内容も他の韓国映画とはかなり異なって見える。
ここまで底辺のみすぼらしい人々を描いたものはあまりないように思える。ヨンペの乗り物がバイクというのも珍しい。
そしてヨンペが警察の似顔絵書きの男に言い寄られるシーンがあるのだが、否定的とはいえここまで露骨にゲイ的なものを描いたものもあまりないのではなかろうか。

性と暴力をこれでもかと見せつけるキム・ギドク。そのやり方はやすりで擦られるような痛みを伴う。
とても正視できない惨たらしさであり、嫌悪感を引き出される。
ヨンペの生き様はこの作品の中の漢江のように汚らしいのだがその水の中は透き通る青い世界である。そんな風に言いたかったのかな、と思ってみる。

監督:キム・ギドク 出演:チョ・ジェヒョン ウ・ユンギョン チョン・ムソン アン・ジェホン アン・ジェフン
1996年韓国


posted by フェイユイ at 21:35| Comment(0) | TrackBack(1) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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鰐 -キム・ギドク-
Excerpt: 4/1,5 DVDにて鑑賞 この作品の感想は難しい。 というのもあまりいいと思わなかったからだ。 最近のキム・ギドク賞賛気味の自分にとって、監督のデビュー作をあまり評価できないのはなんとも言いがたい..
Weblog: y(o)u's-films-for-y(o)u
Tracked: 2008-04-10 17:17
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