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2008年04月07日

『マラノーチェ』ガス・ヴァン・サント

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MALANOCHE

ずっと前からブログに貼りつけまでしてDVDレンタルを心待ちにしていたくせに松山ケンイチが突然自分の心を支配してしまったことで観るのが今になってしまった。
僅か78分のガス・ヴァン・サントのモノクロフィルム。彼の初めての長編映画はやはり素晴らしくあっという間にその世界へと引きずり込まれてしまった。

あまりにも自分が好きな世界でどう表現していいか混乱してしまう。
小説なら主人公の独白のみの本当に短い一編という感じだ。
主人公である白人の青年ウォルトは決して裕福というわけではないが、それでも田舎町の食料雑貨店での仕事で生活している。その彼が恋する相手は密入国をしたと思しきメキシコの少年たち。
とりわけジョニーの美しさにウォルトはなんとか心を通じ合いたいと願い続ける。

一方的な思慕。金で買うのではない、心を通わせたい、というウォルトだがそれでも結局はメキシコの少年たちの若い肉体を求めているに過ぎない。ウォルト自身も年配の白人男性に思いを寄せられてはいるのだが、それに答える気持ちはまったくないようだ。
ジョニーを愛しているとは言いつつも思いが達成できなければ彼の友人ロベルトと肉体関係を持ってしまうウォルトの恋心も一途ではなく。
しかしカマ野郎と蔑まれながらも少年たちを口説こうとするウォルトの懸命さはいじらしくもある。

強い陰影を感じるモノクローム。心をかき乱すラテンの歌。ウォルトの熱い思いを感じさせる沸騰する湯や機関車の音がガス・ヴァン・サントらしい暗喩である。

マラノーチェ=最悪の夜、とはいえ毎晩が最悪の夜のようでもあり。ウォルトは繰り返し繰り返し最悪の夜を迎えているのではないか。
その言葉の響きが日本語で聞けば男性の性器のようだとガス・ヴァン・サントに言えば面白がるだろうか(さらに言えば男性性器が残念がっているようだし)

ウォルトはジョニーを求めて彷徨う。ジョニーはそんな彼から逃れて彷徨う。
ウォルトは美しいラテンの少年に恋焦がれているが、自分はそんな風に恋焦がれているウォルトの表情に酷く惹かれる。
ウォルトを演じているティム・ストーリーターは時折リヴァー・フェニックスのようにも見えはっとさせる。
ガス・ヴァン・サントはほんとうにこういう顔が好きなのだなあ。メキシコの少年に恋している彼の方が酷く魅力的に見える。

結局物語の中でロベルトは死に、ジョニーはウォルトから逃れて街を彷徨っている。
ウォルトは相変わらず小さな店で店員をやりジョニーが店に来る事を待ち続けるのだ。

その後、何度もガス・ヴァン・サントの映画に用いられるイメージがここですでに使われている。
走り続ける車、走り去る風景、大きく動きうねっていく雲、風。
車の中でウォルトはジョニーを求めながら見つめるが思いがかなうことはない。
それは後の『ジェリー』でもあり『マイプライベートアイダホ』でもあるだろう。

まだ荒々しく乱暴にこの映画は思いと行動を見せつける。ウォルトの願いもまた乱暴ではあるが報われる事のない残酷さにやはり心は痛くなってしまう。

監督:ガス・ヴァン・サント 出演:ティム・ストリーター ダグ・クーヤティ サム・ダウニー ナイラ・マッカーシー レイ・モンジュ
1985年アメリカ



posted by フェイユイ at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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