映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年04月11日

『ユメ十夜』一夜

ユメ十夜a.jpg

やっとやっとついに観た『ユメ十夜』台湾版で観たので『夢十夜』だったけど。
観る前にちょとだけ他の人の評を見たら「夏目漱石の素晴らしい原作をこんな風にしてしまって(怒)」というようなものが多かったのでつい侮っていたのだが、これがかなり自分的には唸らせられた。よく吟味して日を改めて記事を書こうと思っていたがどうにも我慢できず少し書いてみる。

先日購入した台湾版DVDを観ようとして原作未読だったのを悔い、今度は慌てて原作小説を注文し漱石先生には失礼ながら急ぎ読み下した(読み込むまでは到らなく筋を追った程度だが)思った以上に短い短編だったので(星新一氏のショートショートくらい)却ってこれを映画にできるのか、と思えたが、なるほど出来上がりを見ればかなり話を継ぎ足してある。もし原作に忠実ならほんの5分もかからないだろうか。つまりは監督陣の思い入れが随分加筆されているわけでそこが見所となっていた。
未読のまま観るのを躊躇してよかった。映画と原作は別ものとはいえ、これはやはり夏目漱石の名文を読んで観たほうが絶対によいのではなかろうか。後読みでもいいと思うが原作を読むと映画化する工夫の面白さがまた格別である。
それにしてもこんなに面白く自分が好きな話をなぜ今まで読まなかったのか。本当に腹立たしい。ま、読む時期というものがあり、松山ケンイチを好きになることでこうして夏目漱石の一名作を読む機会ができたことで良しとしよう。
まったくのところ、この僅かなページ数の原作は面白いの一言に尽きる。これが遠い昔の人の手によって書かれたとは。この生き生きとした文章の上手さは確かに映画にするのは至難の業であろうが、それはそれ。それぞれの映画人があれこれ知恵を絞り技を競い合ったこのオムニバス、心底楽しむ事ができたのだった。

とても今夜一晩で語りつくせはしないだろうが、まあ、書けるとこまで書いてみようか。
記事タイトルの「一夜」は物語の一夜ではなく、私にとっての一夜である。

オムニバスといえば『パリ・ジュテーム』の時も内容の千差万別の面白さに何夜もかかって記事を書いたが、私にとっては『ユメ十夜』もかなり楽しんで書けそうだ。

まずは最も面白かった作品発表。一夜目から追っていては退屈だろうから。
それは『第六夜』
監督・脚本:松尾スズキ
出演:阿部サダヲ TOZAWA 石原良純
これは何と言っても最も原作に忠実に映像化しつつこの自由な発想という飛びぬけた面白さではなかろうか。
これこそ原作と見比べて欲しいがあの僅かな長さの物語を他の作品のような継ぎ足しを殆どしていない、と思えるほどに忠実に再現しているのである。且つその表現は自由であり計算されているという物凄い技巧である。
監督の松尾スズキさんの名は無論知ってはいたが作品は多分知っていない。が、この作品だけでいかに優れた才能であるかは認識させられた。
原作自体、10編の物語の中で最もおかしさのあるものなのだが、その一編を選ばれたのか与えられたのかわからないがこの『第六夜』をスズキ氏がやることになってよかったのではないだろうか。
明治時代に生き残っているはずのない運慶が生きていて仁王を彫っているのを見物するという荒唐無稽な夢の話だが、そのおかしさをブレイクダンスで表現する。阿部サダヲのぶつぶつ悪口を言う様子もおかしくてしょうがない。
「さすがは運慶だな。眼中に我々なしだ。天下の英雄はただ仁王と我とあるのみという態度だ」というとこなんてもう大爆笑。
ここは是非もう原作と読み比べていただきたい。
大体夏目漱石という人は日本の文豪の代名詞でもあるのに凄くコメディがかける人だ。私は昔よく『我輩は猫である』を読んでげらげら笑っていたんだけど、明治時代に書いた文章で笑えるのも凄いんではなかろうか(イや私じゃなく漱石がね)文豪だからコメディも書けるのかコメディが書けるほどでなければ文豪じゃないのか、よく判らないが漱石の文章はとにかくおかしいところが凄い。
そのおかしさを映像に仕立て上げてしまった。漱石なのにパソコンでネット的な文章を書いていくのもおかしいが確かに漱石が今いたらばそのくらいやってそうであるし。
芝居がかった台詞「萌え」なんていう掛け声だとかもうノリノリに乗せられてしまう。
この物語は「夏目漱石の作品は作り物」だと言われた漱石が自分は作るのではなく掘り出しているのだ、という意味を込めているのらしい。
最後の原作にない付け足しもひねりがあって秀逸な作品だった。

『パリジュテ』の時に表第一位と裏第一位があるなどと書いたのだが、本作の裏第一位はどうしたって松山ケンイチ主演の
『第十夜』
監督:山口雄大 脚本:山口雄大、加藤淳也 脚色:漫☆画太郎
出演:松山ケンイチ 本上まなみ 石坂浩二 安田大サーカス
である。
これはもう冷静に判断はできないのでどうしようもないが、『地獄甲子園』を監督しただけあって徹底的にぶっ飛びな作品で徹底的に原作をぶち壊しているのが上と違ってまた最高であった。
また注目すべきは松山ケンイチが今までの主演・準主演映画作品またはドラマと大きく違う美形の嫌な男を演じていることである。
真面目で素朴で何故か本人よりブサ系を演じる事が多かった彼とは思えない変身振りである。
まあ、この時代の2枚目っていうのはもう少し女性的な方がしっくりくるし、展開の無茶苦茶も際立ったのかもしれないが、自分的には嬉しい悪役だった。何となく「豚野郎」って台詞がいまいちまだ板についてない気もしたが。
ロボ以上のハチャメチャで何より本人が楽しんでいるのが伝わってくる。「よかったねー」てな感じでにんまり観終えた一作だった。
町内一の好男子、昔だったら沢田研二がやるとよかったかな。何故か関西弁が使われてたからそう思ったのかもしれないが。

と、ここで明日に(今夜か)に続く。






posted by フェイユイ at 22:51| Comment(4) | TrackBack(0) | 松山ケンイチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うわー☆『パリジュテ』に引き続きベストワンが一致☆ですよフェイユイさん〜^^v・・先日私が言った“唯一飛びぬけていい一夜”とは正に第六夜ですっっ!!
スイマセンが私は原作未読です。この作品のようなお話のなのですか。しかしそのことのせいなのか?兎に角飛び抜けて面白い。会場でも一番(というか唯一)受けていました。・・最後に“北海道土産のクマの鮭くわえたヤツがぽろっ”て・・(爆)!!
全編流れる(笑)リズム感が最高!・・のっけから血眼で走ってくるアベサダ、説明のネット文字多用、流行言葉の濫用(笑)、だいいち^^;日本語に英語字幕って(笑)cの着眼点に爆笑です。スズキあんたはおもろいっ!・・そして妙だけど迫力ある運慶(本物のダンサー)のパフォーマンス、そこにかぶさる興奮を煽る音楽!リズム感溢れる編集。ひっじょ〜☆に素晴らしい。短編だからこそ出来た良さが満載でした。今思い出しても笑えて来るような、また観たい、一夜です。
第十夜は、、ごめんなさい忘れてしまったのです。。^^;
他の夜の中で割と印象的だったのがアニメーションの作品。どうしてかというと個人的に声を演った方というのがその頃ドイツのブンデスリーガ(サッカー)司会をしていたサッシャさん。この人、声がすごくいいな、と思ったから。。
他の夜も、これからパンフレットを引っ張り出して思い出してみようと思います^^
Posted by フラン at 2008年04月12日 20:53
連投すいません。
関係ないのですが、右欄“カテゴリ”すぐ下のケンイチ君の写真、す〜ごく素敵ですね◎^^
Posted by フラン at 2008年04月12日 20:59
・・云い足りなくて付け加えです・すいません。
第六夜ですがこのモノクロの“日本映画”は、見るからに“昔の日本映画”なのであり、それを外国人が観ているから字幕がついている、と(爆)。全体的な雰囲気もそうだしカットを思い出せば例えば『七人の侍』とかをパロッているような。その視点が斬新で。しかし中身は「萌えっ!」(笑)とか世界的に有名な秋葉系言葉。そこに英語の訳がついてて、またまた笑える。幾重にも可笑しいわけです。細かく見るととても手が込んでいるし。松尾スズキの演出力って、尋常でないな(笑)と思った次第です。強力なる映画作家、誕生か?(笑)
Posted by フラン at 2008年04月12日 21:16
一致してうれしいです!!(笑)
でもそうなんですか。劇場ではこれだけ受けてた、みたいな感じだったんですねー。
やはりいいものは皆さん受け止められるんですね。
上にも書いてますが原作読むとこのはちゃめちゃ映画が原作に忠実なのがわかりますます唖然とします。
原作そのものでありながらこのブッ飛び感。一体どうしたらこういうものができるんでしょうか。

しかしそれにしてもフランさんのコメントでやっとわかったんですが、これに英語字幕がついてたんですね。
私と来たら台湾版DVDなんかを買ったものだからそれがわかりませんでした。
私はずっと中国語字幕をつけながら観てましたので^^;

アニメーションはやはり美しかったですね。実はこれも私は困ったことがあったのですが。後で書きます。

右側のケンイチくんは中国から引っ張ってきたものです(笑)
向こうでも『デスノート』が人気なのでファンが多いようです。
松山健一、で出てくるんですけどね(本人は研一なんですが。勿論カタカナは使わないから^^;)

Posted by フェイユイ at 2008年04月12日 23:08
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