映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年05月03日

『ラヴェンダーの咲く庭で』チャールズ・ダンス

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LADIES IN LAVENDER

実はこの映画、昨晩観てすぐ記事を書こうとしたのだった。その時、自分のこの映画に対しての感想は「二人の女優は素晴らしいが、物語には疑問が残る」という否定的なものだったのである。
だがどうしても上手く書いていくことができない。疑問というのは、まるで嘘のような青年の登場の仕方、何の疑惑もなく世話を続ける老婦人達、偶然流れ着いた人物が信じられないほどの美貌の青年が天才的なバイオリニストであり、また偶然村にやって来ていたすこぶる付きの美女が有名バイオリニストの妹だったという事実。
一体彼らは何者なのか、どういう運命の仕組みで二人がこの辺鄙な村にたどり着いたのか、戦争と天才的音楽家がどう作品の中で構成されていくのか、二人の老婦人と美女に恋する老医師はどのような行動にでるのか、いつもの癖であっと驚くサスペンスを期待していたのだが、全ての謎は判らないままで何の行動も起こされなかったという物語にそれぞれの人物の意味はなんなのか、伏線というものがあったのではないのか、それらを全て無にしてしまうとは信じられないようなお粗末な話ではないのか、と思ってしまったことなのだ。

確かに自分は作品中に示される人物や出来事に何の意味があるのかをいちいち考えてしまう癖がある。
伏線が巧妙に張られている物語に感心してしまうし、思いもかけない展開に期待するところがある。
それらを全て裏切られてしまったのだ。
庭先の海岸に心奪われる美青年が流れ着くというのもその青年に恋するのはおかしい年頃の老女が心奪われてでもやっぱり駄目だった、という結末も不満があった。
それなのにそれを書きたてようとしてもどうしても自分で納得できなかたのだ。

この作品ではそういったあらすじだけを追う鑑賞ではいけなかったのだ。
老婦人の前に突如として海の中から表れる言葉の通じない外国の美青年に恋をする、という妖精物語なのだ。
音楽を愛する美しい妖精はあっという間に別の妖精(ここでは魔女のように言われていたが)に連れ去られてしまう。
それは現実的ではないが、もしかしたら自分にも起きるかもしれない夢物語である。
老女になるまで一度も恋した事のなかったアーシュラは初めて夢のような恋をしてしまう。ひと夏の夢。
決してかなうことのない恋に苦しむ姿に悲しさを感じてしまうが、それでも彼女は恋をする、という感情を初めて持てたのだろう。
愛した人の姿を見届けて「帰りましょう」という言葉にはもうしっかりした決意があった。

どうも自分は、起伏のあるストーリー、何らかの確実な結果だけを求めてしまっていたのではないか。
いや、アーシュラは得がたいほどの美しい恋を知ったのだ。そのことが羨ましい。

二人の老婦人を演じたジュディ・デンチとマギー・スミスの素晴らしさは最初から見惚れるばかりだった。
のどかな海岸の村で慎ましくはあるが穏やかな生活を送る老姉妹の様子はずっと観ていたい様な深い味わいがある。
結婚した事のある姉が妹のかなうわけのない恋心に気づき口にははっきり言わないがずっと見守っていくのに心打たれる。妹は思うようにならない恋に苛立ち、時に姉に当たったりもする。
その恋の様子は滑稽でもあり切なくいじらしい。一体自分はこういう老人にならないと誰が言えるだろう。

夢を表したかのような美青年にダニエル・ブリュール。その美貌はこの役にまさにぴったりである。あどけない寝顔にアーシュラが惹かれたとしても当然ではないか。
スペインとドイツの血が混じる彼はそのままそれぞれの魅力を併せ持つようだ。スペイン語、ドイツ語、英語は話せるという彼が英語をうまく話せない演技をしているのが可愛らしい。確かにthの発音は難しい。
地元の若者との顔立ちの差がはっきりしているのがなんともいえない。ご婦人というのは外国の美形に弱いと相場が決まっているものなのだ。
突如登場する名バイオリニストの妹。アーシュラが悲しくなってしまうような美女である。当然アンドレアも彼女に惹かれていたはずだ。だが、この作品中では二人のキスシーンすら出て来ない。これはアーシュラと鑑賞者のためのせめてもの心遣いではなかろうか。

監督:チャールズ・ダンス 出演:ジュディ・デンチ マギー・スミス ダニエル・ブリュール ナターシャ・マケルホーン ミリアム・マーゴリーズ
2004年イギリス






posted by フェイユイ at 20:36| Comment(6) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おおー☆観てくださいましたか!^^そうなのです〜こういったお話は,「ただただ黙って何も考えず“騙されて”あげる」姿勢が必要なのです〜◎
そうですよね、なんでイキナリ人が流れ着く(笑)そしてなんでその彼が美形の天才音楽家、オマケに何故同じ村に偶然高名バイオリニストの親族がいるノダーー!?ってな突っ込み所は満載☆なわけで。でもイイのです、「お話」なんだから。そしてもしかするとこの姉妹の感情というもの、自分と重ね合わせられる部分がないとはいえない・・いえ、あるのですねぇ、共鳴するところが。そこがこの二人の女優の表現力の素晴らしさ。私が一番ぐっと来たのは、アーシュラが散髪して落ちた彼の髪を一束そっと、隠すシーン。恋をしたことのなかった彼女。初恋というのは誰にとっても初々しいものだということが、切に胸に迫りました。
良い映画には良い音楽が必ず寄り添っている気がします。この作品ではその妙なるヴァイオリンの調べが,最高に効果的でした。ただただ“酔える”映画でありました。
Posted by フラン at 2008年05月03日 21:18
私にとっては物凄く難しい映画でした。
いつも理屈ばかりこねてますからねー(笑)
でも昨日悪口を書きたてていたら「なんだか違う」って思ったのです。自分で自分が説明できない。
これはこういう目で観ちゃいけないんだ!と思ったら途端にすーっといい映画だった、と思えましたよ。
きっとこれからも何かと思い出す映画になりそうです。

そうだ。書き忘れていました。
ダニエルのバイオリン聞いてて急に音楽映画を観たい!と思ったのです。幾つか見つけましたが、意外に見つけきれないものですね。何かお勧めありますか?
勿論観てしまったものもあるのですが・・・。一応予定は『真夜中のピアニスト』『マーラー』『アマデウス』(これは再観ですが)です。
『戦場のピアニスト』は一度観たけど好み的に受け付けず、『海の上のピアニスト』はレンタル難しそうでした。

すみません、変な宿題出して。時間がある時お願いします。これは知らないだろうというようなほど嬉しいのですが^^;全編音楽でなくていいのですが^^;^^;
Posted by フェイユイ at 2008年05月03日 23:15
つらつら思い巡らしてみますと・・音楽も内容も両方いい、というのは所謂名作が多いですね。『ドクトル・ジバゴ』『ひまわり』『ウエストサイド・ストーリー』『太陽がいっぱい』『死刑台のエレベーター』等々・・有名すぎてフェイユイさん当然みているでしょう。あ、ロベール・アンリコ『冒険者たち』は?この作品は私のとっておき。別格ですがフェイユイさんには“甘い”とお叱りを受けそうな(笑)
古いタイプ(笑)では『ロシアより愛をこめて』と『黄金の腕』なんてオープニングタイトルロールが素晴らしくてワクワク感大です。そう『黄金の腕』『酒とバラの日々』(フランク・シナトラ繋がり!)は渋いかもしれません。イギリス映画では『フォロー・ミー』もジョン・バリーの音楽が最高に素敵ですが、DVDないんでしたね(涙)『小さな恋のメロディ』は本当に優れた音楽映画だと思いました。
最近ではつい先日の『リトル・ミス・サイシャイン』もよかったですが少し昔の『シャイン』(ご覧ですね)あ、『ピアノレッスン』は?私は大好きです、ホリー・ハンターとハービー・カイテルが官能的です。
オーストラリアに来ました!(笑)出ました;カルト映画の『ピクニック・アット・ハンギングロック』!
・・うはー、ちょっと今日はここんとこでやめときます(笑)。。何だかまだまだ思い出しそう。。??
Posted by フラン at 2008年05月03日 23:50
わー早速たくさん教えていただいてありがとうございます。

『ピアノレッスン』は私も観ていて好きでした。よかったらこれのような実際に楽器を弾いてる映画が観たいのです(なんというわがまま、すみません)バイオリンでもピアノでもいいのですが^^;
こんなに書いてもらったのに申し訳ないですm(__)m
Posted by フェイユイ at 2008年05月04日 00:32
おはようございます(笑)
私、勘違いしていました☆「音楽が良い映画」ではなくて「音楽家が登場する音楽映画」ですね!アイアイサー!(古^^;)
古いのですが、ご覧になったことは?『愛情物語』『グレン・ミラー物語』『五つの銅貨』『お熱いのはお好き』・・皆、役者は吹替えですがジャズなんかは時々本物のミュージシャンが入ったりしていた気がします。
そして正に、フェイユイさんが求める作品を私はおととい(笑)観てきました!『譜めくりの女』です。監督自身がヴィオラ奏者だそうで作品中の音楽の使い方が非常にいいです!内容も面白い。しかしDVD化は先ですネ〜そして観てないのですが現在公開中の『ラフマニノフ』も。いずれも現在DVDないのは残念ですが、半年後位までなんとか他の作品で持たす、とか。^^;
「楽器を演奏する」・・『天国から来たチャンピオン』ビーティがクラリネットを少し吹いてましたね。・・案外ありそう?・・また思い出したらば。。。^^
Posted by フラン at 2008年05月04日 09:22
いやもう思い込みが強すぎるとつい説明不足になってしまって、すみません。
なのにまた次々と!うーん、凄いですねーフランさんって。映画ソムリエです!
しかし確かに観たいと思ったのは『譜めくりの女』!面白そうですね。興味津々です。早く観たい(またわがまま)『ラフマニノフ』という映画まであるんですね。これも待ち遠しいです。
Posted by フェイユイ at 2008年05月04日 11:11
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