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2008年05月04日

『黒い家』森田芳光

黒い家.jpg

大変面白く観終わった。原作は未読だが他の感想を読むと原作を読んだ場合は映画を観てかなり不満がこみ上げるようなので、未読者の方が楽しめる作品のようである。

とはいえ充分満足した、大好きな作品とは言いがたい。非常に工夫を凝らした観せるエンターテイメントであるとは思うのだが、何といっても主人公がめちゃくちゃイライラする。ホラー映画で悪い奴に向かって「早くこの男(主人公)を殺してしまってくれ!」と叫びたくなったのは初めてである。そういう意味では画期的な鑑賞であった。
だもんだから主人公が敵と戦い倒す場面もカタルシスを覚えるどころかむしろ「ちぇっ。生き残りやがんの!」としか感じなかったわけでこれは監督の意図した目的なのだろうか。もしそれが意図したものならどちらが悪になるのだ?
この映画で最も悪いのは大竹しのぶ演じる主婦・菰田だったのか、いじいじうじうじと主張のないままの生命保険会社員・若槻だったのか、自分自身の感情としては若槻のほうに嫌悪感を持ってしまったために残虐な主婦への恐怖心が薄れてしまったのは確かである。
一体あんなお人よしでプロ意識のない生命保険会社社員しかも主任などという存在があり得るものだろうか。
私としては田中美里がこの役立ったほうが面白かったような気がする。勿論もっとしっかりした性格として。

そういう今までにない主人公へのムカつきがあった上でも面白い作品だった。
ただし(あ、また苦情が)コメディになったことで非常に観やすいホラーになってはいるのだが、その分、菰田幸子の心の闇が行動だけの表現になって奥底の恐ろしい描写は省略されてしまっている。
ねちねちとした説明で心の奥底を描くのを好むか、過激な行動でその異常性を描写するのを好むか、それぞれだろうが私は心の奥を覗く様な作品を期待する。
そのため自分はこの作品の前半は主人公への苛立ちを感じながらも面白く観たのだが、後半のアクションになるとやや興味は薄れてしまった。特に菰田が主人公の部屋を荒す場面や一度いなくなった彼女が再び若槻を襲う場面などはもう興ざめである。

しつこいがそれでもよく頑張って作られた作品だとは思っている。ただ(また)『悪魔のいけにえ』のような行動だけで狂気を描写するという物凄さというものは感じられなかったが。
『黒い家』の韓国映画も作られ公開されている(のだと思うが)自分はDVD化されるのを待つしかないが非常に楽しみである。

監督:森田芳光 出演: 内野聖陽 大竹しのぶ 西村雅彦 田中美里 小林薫 町田康 鷲尾真知子 石橋蓮司 桂憲一
1999年日本

ここに書くのをためらわれたので文章を隠してみた。黒い家2.jpg

この映画の自分にとっての一番の恐怖、というのはほぼ冒頭の若槻が目撃する子供の首吊り場面である。
ポスターなのか、DVDのパッケージなのか判らないが、ガラス越し(障子越し?)に影の映ったこの写真はぞっとするものがある。よく見ればブランコしている少女と干された服の影なのだが。
この映画を観た他の人の感想として「和歌山毒入りカレー殺人事件」を彷彿とする、という人が多くいた。
自分がこの映画で真っ先に思い出したのは、佐賀県で愛人の男と共謀して我が子を保険金にかけて殺害した事件、である。
犯人の女の印象も強かったし多くの人を殺害した先の事件の方が話題性もあったのでそれを書く人が多かったのだと思うが、自分は地元でもあったためにすぐに「佐賀・子供保険金殺害事件」のほうが浮かんだ。特に我が子を自ら殺した、ということが衝撃だった。上に書いた文で検索すればすぐに出てくるが、その描写は生々しく、映画よりも恐ろしい。
殺された少年はいつか殺されることを感じていていつも飼い犬と散歩することだけが拠りどころだったという。海に落とされた少年が陸にあがろうとするのを母親が手で押さえつけたなどという描写は恐ろしすぎる。他にも兄弟がいて同じように保険にかけられて何度も殺されそうになっていたという。
この事件は小説が書かれた後に起きたものなのだ。一体どうしてこのような小説と現実の類似が起きるのだろうか。


ラベル:犯罪 サイコ
posted by フェイユイ at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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