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2008年05月21日

『ザ・コミットメンツ』アラン・パーカー

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The Commitments

今まで観た音楽映画で最も好きなものの一つがこれである。アラン・パーカー作品は好きなものが多いがやはり大好きなものの一つである。

アイルランド・ダブリンの労働者階級の人々の暮らしの中で集まった若者達が選んだ音楽は黒人のソウル・ミュージックだった。

貧しい若者達の生活ぶりも、ソウルミュージックもアラン・パーカーが描きだすとなんだかもう凄く羨ましいくらいはまり込んで観てしまうのだ。
キャストにも有名な役者なんぞいないのだが(バンドの中で役者なのはジョーイ役のジョニー・マーフィだけのようだ)一人ひとりに個性があってきちんと監督の愛情が注がれているのが伝わってくる。パーカー監督がダブリン中の若者を見てまわって決めたということらしいが、みんなチャーミングですてきなんだよなあ。
主人公がマネージャーというのも初めて観た時、ちょっとびっくりした。普通はそりゃ主要メンバーだもんね。しかもその彼が一番ハンサムだという不思議。
マネージャー・ジミーはロックじゃなくてダブリンで黒人のソウルミュージックバンドを結成しようと考える。
ジミーの家に次々と若者達がオーディションを受けにくるのが驚きだったが、これは映画的手法なのか。ダブリンだとこんなに集まってくるのか?とにかくへぼいのばっかり山のように押しかけてくるのでジミーがちょっと聞いただけでドアをバン!バン!閉めてしまうのがまたおかしいんだよね。バリー・マニロウなんていうのが来ちゃうし。
ジミーは選び抜いたメンバーに「アイルランド人はヨーロッパ人の中の黒人だ。ダブリンっ子は黒人の中の黒人だと胸を張って言え」というのがおかしくて。ただでさえ北方の生白い彼らが黒人だって言われてもなあ。言われ彼らが「こくじん、だ」とつぶやいているのがもー笑った。

そして新たに加わったのがジョーイ・ザ・リップスという中年(初老と言ってもいいかな)の男。B・B・キングとも共演したしその他大勢の有名ミュージシャンと旅をし、エルヴィスの家にも泊まったというなんとも信じられないがトランペットは確かにうまい、という謎の男なのだ。
ジミーは彼を信じきれないもののソウルバンドをやるために彼の助言が必要になる。
若者ばかりじゃなくてこういう老獪な人物が入ったのも上手い手法だ。しかもこのオヤジ、他の男は手が出せないでいるのにバンドの3人の女の子全員と肉体関係を持ってしまうというつわものである。

そして彩を添える3人の女性。よくあるバンド物だと女の子達はほんとに添え物に過ぎなかったりするけど、この映画が凄く好きなのの一つはこの3人の女性がそれぞれ魅力的に描かれていることである。男性の憧れの存在イメルダが案外一番ボーカルが上手くってしかもセクシーでかっこいいのだ。
他の二人の女性も、というかバンドのメンバー全員が単に飾りでなくきちんとした物語に組み込まれていることがこの作品のよさで、しかもばらばらな感じになってしまっていないのがなんとも不思議だが、そこらへんがアラン・パーカーの上手さなんだろうなあ。

無論、この作品で最も注目されるのはなんと言ってもメインボーカルのデコ(アンドリュー・ストロング)だ。この迫力のある声と太い体で当時16歳というからあきれた。
この映画がソウルミュージックというテーマで頷けるのはやはり彼の他に聞けない声の凄さにあるわけで。
彼のだみ声と3人の女たちの歌声がまるで戦うように掛け合っていくのが楽しくて愉快でたまらない2時間なのだった。

かといってジミーのアイディアで集められたバンドである彼らは諍いが絶えず次第にケンカばかりになっていく。
ついにはどうしようもない状態になってジミーも愛想が尽きてしまう。
凄いかっこいいバンドが出来上がったと言うのも束の間、爆発してしまった後もそれぞれが自分の道を歩んでいく。
この辺の終わり方がなんともいえない人生の妙でアンチクライマックスというのかでもそれでも人生は続く、という描き方がたまらない。

教会でオルガンを弾いている医者志望のスティーヴン。地味な役割なんだけど、ピアノの弾き方も音楽の愛し方も素敵だった。

有名役者は出てないと書いたがジミーの父親がコルム・ミーニイだったのがうれしい。

監督:アラン・パーカー 出演:ロバート・アーキンズ アンドリュー・ストロング アンジェリン・ボール マリア・ドイル ジョニー・マーフィ マイケル・エイハーン デイヴ・フィネガン マイケル・アーニー
1991年アイルランド/イギリス



ラベル:音楽 青春
posted by フェイユイ at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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