映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年05月23日

『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』フレデリック・ワイズマン

BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界.jpg
BALLET

1992年、ニューヨーク。アメリカン・バレエ・シアター。ヨーロッパ公演に向けての練習とギリシャ・デンマークでの公演の様子のドキュメンタリー映画である。

バレエに詳しいわけでもなく、この作品の中に知っている名前があったわけでもなかったのだが、170分淡々とバレエ風景を写し撮っただけという感じなのにずっと見入っていたのはどうしてだろう。

若干のインタビュー場面はあるものの、特別な演出だとか映されているものの説明だとかがまったく入ってこないのである。
その分、映しだされるバレエダンサー達に集中してみることができた。もう少し見たいのに、というところでカットされるというようなことがないのが最も素晴らしいところである。

DVDなので「解説字幕」というのを選択すれば場面ごとの説明が読めるという仕組みがされている。
だがまあ自分なんぞはそういう説明を読んだからと言ってそう頭にもはいらないし、いちいち立ち止まって説明を読むのもかったるいし、気分を損なってしまうので観終った後で補足的に読むくらいがいいようであった(実際そうした)
上映当時にはそういった説明は(パンフレットに書かれていたのかもしれないが)画面に表れるわけでもないのにそれで充分観れたのではないだろうか。

まあとにかく映画の中でバレエが上演されている箇所もあるのだが、多くはダンサーと振付師とその他の関係者の練習やバレエ団に関するもろもろを映しているわけである。
ダンサー達の練習風景というのはいつ観てもなんとも言えずいいものだ。まだ未完成の緊張感、焦り、苛立ち、上手くいった時の喜びなどを繰り返し観れることになる。
疲れて廊下なんかで寝転がってたり柔軟運動をしていたりするのなんかも見惚れてしまうような綺麗さがある。思い思いに本を読んだり、壁に張り出された何やらをじっと見つめていたりするのもちょっと気になる様子である。
着ている物も華美な衣装ではなく練習着なので体の線がはっきり見えるのが楽しい。みんな一緒じゃなくてその辺にも個性が出ていたりする。
アメリカのバレエ団なので色んな人種の男女が集っているのがまた楽しい。色んな顔立ちと皮膚の色、でもみんなとても美しいのだ。
それぞれに真剣な顔で練習したり、休憩したり話し合ったりしているのが絵のようで画家ならずとも描きとめておきたくなってしまうのである。
上映作品の録画なら遠目で見えづらいかもしれないが練習風景が多いためにダンサーがより近くで撮影されているのは嬉しいことだ。
腕や脚の筋肉、首筋のラインなんかがはっきり見える。薄色の練習着だと汗がにじんで見えてしまう。

練習における演目がじっくり観られるのがいい。クリスティーン・ダンハムの「ライモンダ」に他の団員たちが歓声をあげる。

振付師とダンサー以外の人々にもカメラが向く。
芸術監督という女性はバレエ団の運営を電話での猛烈な交渉。団員たちとの契約を話し合う男性。ダンサーたちの体を見守る整体師の女性。
どの人もダンサーと深い係わり合いを持つ。
契約交渉を受けていた横顔の女性の美貌が凄い。南方系なのだろうか。やや浅黒い肌と厚い唇をしている。見惚れてしまった。

ロシア人女性イリーナ・コルパコワのインタビューが興味深い。アメリカのバレエとロシアのバレエの違いは?と問うインタビュワー。その問いかけにはやはりロシア人から見たアメリカンバレエとはどういうものか。という気持ちが込められているのだろう。
イリーナの答えは「みんな同じ顔ではつまらない。それぞれの表情があるから面白いの」

アテネ・アクロポリスのコロセウムでの野外公演。
暗くなる頃に最後の仕上げをしているダンサーたちの影が美しい。
「春の祭典」テトリー版というものを観て、こういう振り付けもあるのだと知る(といってもかなり前から存在していたのだが)

海水浴で日焼けし、公演後、ギリシャの町の店で打ち上げパーティの楽しげな様子。
コペンハーゲン公演では遊園地に出かけて遊ぶ姿。

そして最後の「ロミオとジュリエット」アレッサンドラ・フェリ&フリオ・ボッカ
なんという愛らしいバレエなんだろう。
まだ幼いといってもいい少年と少女の恋物語なだけにその踊りも初々しい。
締めくくりとなる演目なだけに素晴らしいバレエだった。

本当にあっという間の3時間弱。何の物語も説明もなくダンサーたちの姿を写し撮ることだけが目的という感じでそれが見ごたえになっている。
幾つかのインタビューも興味深いものだった。

監督:フレデリック・ワイズマン 出演:アレッサッンドラ・フェリ/フリオ・ボッカ/スーザン・ジャフィ/アマンダ・マッケロー/シンシア・ハーヴェイ /ジュリー・ケント/パロマ・ヘレーラ/イリーナ・コルパコワ/ナタリア・マカロワ/マイケル・ソムズ/アグネス・デ・ミル/デヴィッド・リチャードソン/ジョージナ・パーキンソン/ユリシーズ・ダヴ/その他ABTのダンサー&スタッフたち





posted by フェイユイ at 22:18| Comment(4) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
急にフェイユイさんがバレエ話題で少し驚き^^。何かきっかけが?私はもう一昨年からバレエにはまっていまして、恐らくバレエは自分の中で一生ものの愉しみなのではないかと予感しています。
ダンサーの身体の美しさ◎て、えもいわれぬものがありますよね。昨日今日で出来たものではないから、なのですよね。^^
Posted by フラン at 2008年05月24日 20:26
何でこれ急に借りたのかな?覚えてません^^;何観ようかと探してて「こんなのあった!」って感じでしたでしょうか。
でもバレエ記事が初めてでないことはご記憶かと思います。『赤い靴』でしたね。
バレエ自体は前から好きでといってもTVなんかで何となく観てるような不実なファンにしかすぎませんが。
じかに観たのはジョルグ・ドンと熊川哲也と何故かボリショイバレエ!!!
誰かが特に好き、というわけでもなく。
バレエダンサーには憧れまくります。男性もですが女性の美しさには!ぽーっ。
これはまさにぽーっと見惚れっぱなしでした。余計なものを映さずにダンサーの美しさを追った点で最高のドキュメンタリーではないでしょうか。『エトワール』というのはインタビューばかり、と書いてあったのでいまいちその気になれないでいます。やっぱりバレエ自体が観れないと。

Posted by フェイユイ at 2008年05月25日 00:12
インタビューばかりではね・・^^;私もレッスンしているダンサーの様子は堪りません!のくち(笑)ローザンヌコンクールとかバックステージも興味深いですよね〜◎
勿論ステージ自体は決定打ですから一番の見所。本番では何が起こるかわかりませんし。人生は一回。
Posted by フラン at 2008年05月25日 00:50
生まれ変わったらミュージシャンにもなりたいけどバレエダンサーも捨てがたい(笑)
努力しろって話ですが^^;
Posted by フェイユイ at 2008年05月25日 12:08
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