映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年05月27日

『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』アラン・パーカー

ライフ・オブ・デビッド・ゲイル.jpg
THE LIFE OF DAVID GALE

先日久し振りに『ザ・コミットメンツ』を観返して「やっぱ、アラン・パーカーはいいなあ」と思い彼のコーナーを眺めたら知らないタイトルがあった。それがこれ。
アメリカを舞台にしたサスペンス・ミステリーというイントロダクションが書かれていたのでどうかなー、と思いつつ観出したのだが、これが想像以上に面白いのなんのって。
無論アメリカ的な内容でありながらやはりどことなく古風なイングランド風味もありながら夢中で見通したのであった。

突然、死刑まで後3日という死刑囚デビッド・ゲイルからインタビューを受けたいという申し込みを名指しでされたのが若い美人記者のビッツィーである。彼女は3日間、彼から事の顛末を聞いていくうちに彼への思いが変化していく。そして彼の最期の願いとは。
語り手と聞き手がいて過去の話をしていく、という形式が自分は非常に好きなのである。小説でもこの形態のものが好きなのだが、映画ながらなんだか小説を読んでいる様な気持ちになってしまった。
ケイト・ウィンスレットはイギリス女性なのでそういう要素もあるのかもしれないが、アメリカが舞台でありながらどことなく古風なイギリスのミステリー、アガサ・クリスティの作品にでもありそうな、という印象を持ってしまった。
というのはこの物語がある男と女の壮絶な人生を語ったもので、重いテーマでありながらも全体から感じるものは「ミステリーの面白さ」というエンターテイメントとして成立しているからなのだ。
そこらへんが上手く伝わらないと「こんな重厚なテーマなのにどこか軽々しい演出だ」と捕らえられてしまうのかもしれない。
この映画は「死刑廃止運動の勧め」だとか「他の人命のために己の命をなげうった男女の悲愴な物語」なのではなく、「自分の生命もうまく利用することができるものだ」とぺろりと舌を出しているようなふざけたニュアンスで彩られているのだ。
とはいえ、そこにいきつくまでの殺人犯とされる教授デビッド・ゲイル(ケヴィン・スペイシー)の苦悩は確かに悲愴なのである。
そして苦悩の末に起こした行動が自ら講義していた「自己犠牲」というものだったのだ。
ところでこのデビッドの物語、どこまでが嘘でどこからが真実なのかちょっと混乱してしまうのかもしれない。
それにどうしてデビッドが離婚するのかがはっきりと説明されていないし、女子大生とのエピソードも違和感を感じてしまう。
この教授さん、優秀で子供を愛しているがどこかで妻と行き違ってしまった。かっとなるところもあって「死刑廃止運動」をしているのにうまく論説をやりきれないでもいる。
その上男の性で女子大生の誘惑に負けレイプ犯の汚名を着せられ、酒びたりとなり堕落しきってしまったのだが同じ教授で女友達のコンスタンスが不治の白血病でありながら人命を救いたいという一心で運動を続けていることを知る。
友達関係だった二人だが打ち解けた話をすることで心が通じ合い愛し合うのだ。
「もっとセックスがしたかった」というコンスタンスの笑い話を優しく受け止めるデビッド。二人の愛は悲しい。
この時、二人は自分達がどうしたらいいのか、と話し合ったのだ。その計画は怖ろしいものだったのだが、彼らにとってはそれがすべてだった。
コンスタンスを敬愛しているカウボーイハットの男性ダスティの協力も借りながら二人は自分たちの夢を実行する。
デビッドがなぜ無能の弁護士を辞めさせなかったのか(死刑になることが目的だった)なぜ多額の報酬を目当てにインタビューを受けたのか(別れた妻子に渡したかった)すべての絡んだ糸がほぐれていく。
世界を変えることは難しい。でもほんの少しだけコンスタンスは変えていった。デビッドの流した涙は本物だった。
そして最後にオペラ『トゥーランドット』を観ながらコンスタンスを敬愛していたダスティは涙を流す。それは愛する人のため自らの命を犠牲にする女性の物語だったからだ。

鋭い推理を行うビッツィーがホームズなら、彼女の付き人にされた可愛い顔をしてはいるがやせっぽちでどうも頼りない青年のザックがワトソン役ということなのだろう。
この二人が物語の狂言回しになっていることで判りやすく、感情移入もしやすくなっている。ただ単にコンスタンスとデビッドだけの話だったらやや入り込みにくかったのではなかろうか。

アラン・パーカーの作品に出てくる子供はいつも凄く可愛い。ここでもデビッドの息子くんがめちゃくちゃ愛らしくてこんな子と別れるのは辛いだろう、とほんとに思ってしまった。
また緊張感を持たせるドラムの音、飛び立つ鳥の群れ、なんていうのがいかにもアラン・パーカー監督らしくて自分の好きな演出なのでうれしかった。

監督:アラン・パーカー 出演:ケビン・スペイシー ケイト・ウィンスレット ローラ・リニー ガブリエル・マン ローナ・ミトラ マット・クレイヴン レオン・リッピー
2003年アメリカ



posted by フェイユイ at 22:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アラン・パーカーはロンドン出身だから英国の香りがどこからか漂うのかもしれませんね。
私は未見^^;ですが実はこの作品、私がファンの全然映画を観ないあのお方(笑)山本耕史が、3年前に某雑誌でオススメ映画として挙げていた貴重な一本(笑)。彼は勿論感動していましたが、どうして観たかというと、前年に三谷幸喜氏から誕生日プレゼントにこの作品DVDを頂いたからなんですって^^;その理由が面白くて「ケビン・スペイシーが耕史君に似ているから」だそうな。〜三谷さんにはそういう風に見えるのネ?・・と今でも不思議です〜。因みに、スペイシーは全然好みでないんで今の所一作も観ておりません(笑)。
Posted by フラン at 2008年05月28日 16:00
へええ、そんなことがあったとは〜(笑)
イヤほんとにお薦めですよ!
耕史さんとスペイシーが似てるとは全然思いつきもしませんでしたが(笑)
でもそれは外見じゃなく演出家として役者のイメージじゃないのでしょうか?
といってもよくわかりませんが^^;

私はスペイシーが出てるとは全く知らずに観始めたのですが(笑)特に彼を意識することなく面白く観ましたよー。
Posted by フェイユイ at 2008年05月28日 19:45
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