映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年06月04日

『太陽』アレクサンドル・ソクーロフ

太陽.jpg
The Sun

いろんな意味で話題となった映画で観たいと思いつつもいざとなるとどうなのかなと変に尻込みしてしまっていたのだが、これは面白かったなあ。
こういう雰囲気の映画だとは思いそうでまったく思っていなかったのだった。

なんだかヨーロッパのちょっと幻想的ファンタジーかSF映画でも観てるかのような不思議な色彩と音の作品なのである。
日本人であるためにファンタジーとは思えずに「事実と違うのではないか。似てるのか似てないのか」などとつい現実として観てしまうのは仕方ないのだが、これが異国の物語としての鑑賞ならなんとも風変わりで愛嬌のある小柄なおじさんが「エンペラー」であることに微笑ましく思い、戦争に負けて己の生命がどうなるかという瀬戸際に蟹の研究をしていたり、映画俳優の写真を眺めたりしてる様子を面白がったり、怖ろしいはずの戦勝国の将軍相手との対談が中断した折にダンスをしたり蝋燭を消して遊んでいたり、とまるで子供のような姿に見入ってしまうことだろう。
いや日本人である自分だが結局天皇が敗戦のあの時にどのようなことを考え、どう過ごされていたのかは知る由もなく。ただ外国人であるソクーロフ氏が感じた天皇と日本というものはこういうものかと受け取り、彼のヒロヒト天皇への愛情を見てしまう。
 
それにしても中国においての神もしくは龍の子孫であった清の末代皇帝・溥儀が激烈な教育の下で普通の人になった経緯と比べると日本の天皇の人間宣言の緩やかなことか。但し、最後にその為に青年が自決したことを聞き、またもや天皇は苦悩する。だがその苦悩を振り払うようにヒロヒトは皇后に手を引かれて子供達に会いに急ぐのだ。

もっと強い反感を持つのか、途方にくれる思いにさせられるか、と思っていたのだが非常に楽しく観ることができた。
ヨーロッパ・ロシアの人が撮るとやはりそういう雰囲気になるのが面白い。影のある重い色彩がロシア・ヨーロッパらしい暗さであるのが興味深かった。日本人ならもっと白っぽいぺたんとした絵柄になると思うのだが、あの薄暗い廊下や部屋のライティングも影がきつくて重厚なのである。
ヒロヒト天皇と皇后がとても深く愛し合っておられるように描かれているのが微笑ましい。皇后が「あなたは普通の人かしら」神でしょう、と言いながらもまるで子供を抱くように抱かれるのが他の誰も見ていない場面だけに本当らしくて可愛らしかった。
神と呼ばれた人間が人間に戻るまでのひと時を童話のように描いた作品だった。

監督:アレクサンドル・ソクーロフ 出演:イッセー尾形 ロバート・ドーソン 佐野史郎 桃井かおり つじしんめい 田村泰次郎
2005年 / ロシア/イタリア/フランス/スイス


ラベル:戦争 歴史
posted by フェイユイ at 00:32| Comment(2) | TrackBack(1) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBありがとう。
日本の監督であれば、こういうようにヒロヒトを描けないでしょうね。
ソクーロフのある種の距離感のようなものが、逆に、ヒロヒトに上手にフォーカスをあてられたような気がします。
Posted by kimion20002000 at 2008年06月22日 01:19
いつもありがとうございます!!!

でも実際、日本人監督に作ってもらいたい気はしますね。どうなるんだろうかと(笑)
私は昔人間なのでまだ怖いです。若い人なんかが作るとなると。年寄りだと笑ってしまいそうだし。

外国人が作っているということで何とか落ち着いて観れました。
それにしても面白い映画でした〜。
Posted by フェイユイ at 2008年06月22日 01:27
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mini review 07226「太陽」★★★★★★★★☆☆
Excerpt: 1945年8月。その時、質素な身なりをした昭和天皇ヒロヒトは、地下の待避壕か、唯一被災を免れた石造りの生物研究所で暮らしていた。宮殿はすでに焼け落ちていたのだ。 続き 不可思議なヒロヒトを、日本人..
Weblog: サーカスな日々
Tracked: 2008-06-20 17:07
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