映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年09月21日

『色、戒 ラスト、コーション』アン・リー

色、戒22.jpg
LUST, CAUTION

うん、非常に楽しみました。男と女の恋愛は戦争なのよ、という感じでしょうか。

戦争もの、というのはいつも悲劇であると同時にあまりの空しさに馬鹿馬鹿しくて笑いたくなってしまうものだけど、ここでも男たちはいかにも男らしく勇敢なことを言ってみせるくせに実際矢面に立たせるのは女を使うものなのだね。それは日本でもどこでも同じようなもんじゃないのかと思うんだけど。
優男面して(ワン・リーホンごめん)いかにも愛国心があり女性にも優しそうな素振りの大学生クァンなどチアチーを抱くことすらしない。自分はまるでいい人間のフリをして全部女のチアチーに危険を押し付け心配して見せたりするのが腹が立つ。「君を傷つけさせはしない」って女が自分の意思でなくセックスさせられてるなら充分それが「傷つけられていること」だろうが、この坊ちゃんはそんなことすら気づかないんだよ。そしてチアチーが心を決めてイーと戦っている最中にキスをしたりする。っもう馬鹿だこいつ。
抗日運動の幹部らしき男も妻子への復讐の為なら何でもするみたいなこと言ってチアチーがイーとのセックスの惨たらしさを話し出すと我慢できずに止めろとどなったりする。何でもするなら自分でやれっつーの(トゥオ・ゾンファ様ごめんなさい)
おいおいこれって結局全部チアチーの肉体だけに依存しすぎじゃないの。「もう少し油断させて、もう少し機会を待って」ってなんだかもっと早く暗殺できそうに思えるんだけどねー。最後なんてもっと早く踏み込んでたらよかったんじゃ。入ると同時にとかさ。仕事が遅いんだよね。
どうも情けない男達を仲間にしてるね、不幸なチアチー。

そんなチアチーは自分の意志の抗日ではなく憧れの男性だったクァンのために逆賊であるイーをたぶらかし、仲間にイー殺害の機会を作ることに没頭していく。
勝負に勝つことだけを考えてイーとチアチーの言葉と体の駆け引きは相手の考えと動きを読んでいく。
ちょうど麻雀で相手の手を読んでいくように。
常に相手を疑い誰にも心を許さないイーがいつしかチアチーを信じ愛するようになっていく。
勝負はチアチーの勝ちなのか。
イーは指輪(中国語で指戒)をチアチーに贈る。妻にも贈ったことのないような素晴らしいダイヤを。その指輪が警告を呼ぶことになる。
チアチーはイーが心を許した印であるその指輪(指戒)を見つめイーの緊張のほぐれた目を見つめてとうとう言ってはならない一言を言ってしまう「逃げて」
その言葉でイーはすべてを解したのだ。

チアチーはイーの組織に仲間と共に捕まり処刑される。勝負はイーのものになったのか。
だがイーはチアチーを愛してしまったのだ。イーはもう誰も愛することはできなくなるのだ。人を愛することができなくなった者はもう何の幸福も感じることはできないだろう。

戦争の中で男らしさを叫ぶだけで何もできないみっともない男達。何もしなかったくせに最後にチアチーを責めるかのようにみる哀れな男よ。
勇敢に戦ったのはチアチーだけだった。
アン・リーは愛のために戦う強い女と戦ったふりをして戦えない弱い男を描いたのではないだろうか。

それはそれとしてとにかくこの時代の中国の話が大好きなのである。抗日という背景があるので日本人としては居心地は悪いが混沌としたこの時代面白くてしょうがない。
上海が舞台になっていることもあって言葉からして中国普通語、上海語、広東語、英語そして中東語(どこかわかんない)が映画の中で入り乱れて話される。字幕だとその辺が一緒くたになるのでいまいち面白さがわからないが雰囲気だけでも楽しいものだ。
タン・ウェイの幼顔なのにすらりとした長身をチーパオで包みまだ初々しいくせに妖しさがある色香を感じさせる。
チアチーがここまで演じきれたのは愛するクァンに認めてもらいたかっただけで、チアチーの心がイーに移った時すべては崩れてしまう。以前はそういうのは女の弱さのようで嫌だったがそれが当たり前のことではないか。女を使って戦争したつもりになっている男たちよりよほど強い精神を持っているのだ。

さて、話題の一つであろうチアチーとイーさんのセックスシーンについても触れないわけにはいかないだろうな。
とにかく最初に話題になったのがカンフーまがいのアクロバチック且つ濃厚なベッドシーンがある、ということだったように思う。
私もどんなものかと思いすぎて武侠ものの空中戦みたいなのを想像してしまっていたがさすがにそういうことではなかったのだね。
確かに接触部分が露骨に感じられるとは思ったがこのセックスシーンに二人の戦いの駆け引きが盛り込まれているわけなのでそういう意味では確かにカンフーと言っていい格闘シーンだ。
愛でしっとり濡れたというより敵の内部に入っていこうという男と女の探りあい、みたいなもんなんで。ベッドシーンがそのまま二人の戦いになっているということでやはりこれはなくてはならぬ場面なのである。


監督:アン・リー 出演:トニー・レオン タン・ウェイ ワン・リーホン ジョアン・チェン トゥオ・ゾンファ
2007年 / アメリカ/中国/台湾/香港

posted by フェイユイ at 22:48| Comment(4) | TrackBack(1) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月06日

『ラスト、コーション (色,戒) (香港版)』12月20日発売予定

ラスト、コーション (色,戒) (香港版).jpg

ラスト、コーション (色,戒) (香港版) が12月20日発売になります。リージョン3なのでご注意を。字幕はこれを見る限りでは中文のみですね。

こちらもありました
色,戒 (DVD) (限量精裝典藏版) (台灣版)
写真集つき。ただし2008年1月10日発売ですね。こちらも中文のみです。

他にもポスターつきだとか色んなバージョンがあるようですね。色々探してくださいませ!
posted by フェイユイ at 09:22| Comment(9) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月05日

台湾ドラマ「ニエズ」日本語版の仕上がりは

ドラゴンCDさんの電子雑誌からこんな便りが届きました。

「台湾ドラマ「ニエズ」の字幕翻訳が次々に上がってき
ていますが、正直なところ監修が全く追いついていま
せん(^^;

初稿は台湾サイドで仕上げてくるのですが、納品され
る字幕の品質がいまひとつです(大汗)

一般的に字幕は1秒間に3、4字読むスピードで、概
ね1場面で12字前後に収まるよう工夫します。

現地サイドでも、この基準に基づいて字幕入れをして
くるのですが、短くすることに主眼が置かれ、前後の
流れを加味していない翻訳が多々あります(苦笑)

このペースでいくと何時お披露目できるのかと、些か
焦ってきましたが、急いては事を仕損ずるの言葉にも
あるように、ゆっくり良い作品を作っていきたいと考
えております。」

大変そうです。でもやはりいい作品にしてもらいたい、と思いますし、納得のいくまで頑張って欲しいですね。
ラベル:ニエズ
posted by フェイユイ at 17:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月19日

「ニエズ」のプロモーションビデオ

ドラゴンCDさんから「台湾ドラマ「ニエズ」のプロモーションビデオが完成しました」という情報をいただいたんですけど。
 
ここをクリック→「ニエズ

ひとつは<関西版>、もうひとつは<全国版>ということらしいんですが、なぜこのプロモーションビデオが作られたのか知らないんですよー。日本字幕ついてるし。なぜ?なぜ?

知ってる方いたら教えてください〜。

追記:一応、ドラゴンCDさんに伺ったら

「台湾ドラマ「ニエズ」の日本でのライセンスを弊社で取得致しました。ビデオは宣伝用に製作をさせて頂きました」

だそうです。何かが起こる???!


ラベル:ニエズ
posted by フェイユイ at 18:08| Comment(12) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月18日

五月天・阿信の「盛夏光年」

五月天の「盛夏光年」ばかり聞いている。いつもジェイの歌ばかり聞いてる私だけどちょっと浮気。

五月天・阿信の歌声ってちゃんと聞いたのは初めてで。のびやかで気持ちよい。映画のイメージとも相まって凄く溺れそう。

CDを買ったんだけど一緒についていたMVもすてき。ここでも観れる。

ここでも
横にいるのはブライアン?
ラベル:音楽
posted by フェイユイ at 21:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月01日

「ニエズ」(Crystal Boys )のYouTube

まもうさんの「まもうのつぶやき…」で「ニエズ」(Crystal Boys )のYouTubeが紹介されてます。
まもうさん、貴重な情報ありがとうございます!!感謝!!
DVDは高価だし手に入りにくいみたいですし、日本でのテレビ放送は全く望みないしせめてこれで「ニエズ」の魅力を知ってほしいですね。

「ニエズ」(Crystal Boys )のYouTube

余計なお世話ですが別部屋「藍空」で「ニエズ」の訳文らしきものをアップしてますのでご参考までにどうぞ。
無能なフェイユイの駄訳ですので「余計わからなくなった!「ニエズ」のイメージが崩れた!」という恐れもありますのでその場合はどうぞご容赦を!
ラベル:YouTube
posted by フェイユイ at 11:46| Comment(4) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月08日

「推手」アン・リー

推手.jpg

アン・リー監督の作品は「ブロークバックマウンテン」の他に「ウェディング・バンケット」と「グリーン・ディスティニー」を観ているがもう少し知りたくなってデビュー作品を借りてみることにした。

中国・北京で生まれ育ち太極拳の名手であり達筆、京劇を楽しむ、という中国文化を体現化した如くの朱老人(と言うの憚られるが)がアメリカで学びアメリカに家庭を持つ一人息子に引き取られることになったのだ。
が、息子の嫁はちゃきちゃきのブロンドアメリカン。中国5千年の歴史と新大陸アメリカとの戦いが始まった。てわけじゃないけど若い嫁マーサと朱老人はまったくソリが合わない。
互いに言葉が通じずまた意思を通わせようと言う気持ちもまったくない。
マーサの夫であり朱老人の息子であるアレックスはその間に挟まって苦悩の日々。真面目な性格もあってついに爆発。台所をメチャメチャにして飛び出した。

観ているとどの人の気持ちもよーくわかるという細やかな脚本・演出。最も悪役的なのはマーサだろうけどせっかく今までいい家庭を築き自分は新進作家として執筆中、という所へ中国語しか解さず(変な字を書いたり)急に踊りだしたり(太極拳)奇声を発したり(京劇を見ながら)タバコの吸殻をあちこち捨てたり(これはいかん)自分はダイエットのために野菜しか食べられないのに目の前で油たっぷりの肉料理をぱくつく老人が来たらばこれはいらだつことであろう。
たとえ言葉が通じたとしても(却って通じない方がまだ我慢できるかもしれないが)相容れないことは見えている。
私なんかはこんなステキな義父ができたらうれしくて弟子入りしそうだ。太極拳も習ってみたいし言葉を教えてもらって色々話を聞いてみたい。だがまあこれは私が中国オタクだからであってそうでないものには野蛮な風習にしか見えないのかもしれない。

反発しあう舅と嫁はまだしも板ばさみのアレックスはどうしようもない。
割り切れと言われても割り切れるものではない。心底父親を尊敬し愛しているのが伝わって来る。マーサが病気になって倒れても父親の書を表装しようかと心配したりする。
中国の家父長制度とアメリカ式夫婦との軋轢で彼の精神はついに沸点に達してしまったのだ。

アレックスがメチャメチャにしたキッチンをいがみ合う嫁マーサと義父が力を合わせて片付けていく。
それは一旦破壊された世界が再生するかのような予感をもたせたのだが実際の生活はそうは上手くいかない。この辺の展開が実にうまい。

独り身の父親を未亡人とくっつけて片付けてしまおうという息子の陰謀を知り、誇りを傷つけられた朱老人は自ら家を出ることにした。70歳にして皿洗いのバイトで生計をたてようというのだ。
だが初体験で手間取る朱老人を店の社長は冷たくクビにしようとする。
反論した朱老人をチンピラを使って追い出そうとするが朱老人は太極拳・推手の達人。
彼らの攻撃にはびくともせず、あっという間に皆をなぎ倒してしまう。
おまけに駆けつけたポリスマンらも歯が立たない。どこまでもかっこいい朱老人なのであった。

推手と言うのは襲い掛かってくる敵の力を利用してそのままそれを敵に返し倒してしまう、という極意なのである。(間違いでしたらすみません)
その達人である朱老人も生活においては「無の境地に達するのは難しい」とつぶやかざるを得ないのだった。

結局アレックス・マーサ夫妻(息子一人)と朱老人は別居する事になる。心の安静を取り戻したマーサは新居にいつ来てもいいように朱老人の部屋を用意した。
部屋の壁には朱老人の剣が飾られた。

朱老人は息子達の陰謀で一度は離れる事になった陳さんとよりを戻す。
「午後、用事はありますか」「いいえ」これは老いらくの朱さんと陳さんのラブストーリーでもある。物語は明るい日差しのなかで幕を閉じた。

たんたんとした語り口ながらアクションありラブあり食事のシーンも美味しそうである(ちゃんと食べてる)
冒頭部分、白人女性とアジア系老人が延々と(と感じる)黙したままでいるのが何も知らないまま観始めた者(私も)はちょっと困惑してしまう。この困惑が物語の核心なのでここでめげないで欲しい。

無理矢理こじつけだが最後の朱老人の剣を壁に飾るのを観て「ブロークバックマウンテン」で愛する人のシャツを箪笥に掛けていたことをちょっと思い出す。
また父親と息子というテーマも重要なものとなっている。

なお特典としてアン・リー監督のインタビューが付属していた。「ブロークバックマウンテン」の宣伝での来日の際に行われたらしくポスターの前でのインタビュー。
「ブローク」との比較もしつつ監督の映画について質問・応答されていたのが興味深いものだった。
ラベル:家族
posted by フェイユイ at 21:53| Comment(2) | TrackBack(2) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月04日

「僕の恋、彼の秘密」Formura17、17歳的天空

僕の恋3.jpg僕の恋2.jpg僕の恋.jpg

やっと日本語字幕で観ました(笑)
前に記事にしたのが2004年10月15日ですね。ほぼ2年の月日が流れてしまいましたよ。
初めて観た時は勿論ニエズがらみで楊祐寧(トニー・ヤン)と金勤が目的でした。トニーの恋の相手役・周群達(ダンカン・チョウ)は知らないせいもあっていまいちピンとこなかったんだけど、この年月の間に「七剣・セブンソード」を観てすっかりダンカンの株は上がったのでした(笑)
だもんで今回観ていてダンカン演じるバイが素敵〜と言う目で見て楽しめました。やっぱり贔屓目を持って観るのは全然違いますね。

同性愛を描いたモノというと何となく重く苦しい話が多い気がしてそれは好きなんだけどそればかりだと寂しくなってしまう。
確かにこれも思いつめた一途な気持ちが描かれているんだけど金勤たちのお馬鹿騒ぎも功を奏して楽しく明るい雰囲気に仕上がっている。けれども恋は一途、というのはやはり大切な要素ですね。明るい仕上がりと言うだけで恋でなくなってしまってはつまらない。バイとティエンが一目会った時からずーっと相手を思い続けているのがよいですね。

プールのシーンも爽やかな青春ラブコメでした。

監督:DJ・チェン 出演:周群達(ダンカン・チョウ)楊祐寧(トニー・ヤン)金勤、ダダ・ジー
2004年台湾
ラベル:同性愛
posted by フェイユイ at 23:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする