だがその時、楊過は郭襄の涙を額に感じたのだ。
宋の襄陽城は蒙古軍に攻められ窮地に陥っていた。郭靖を先頭に必死の攻防が続いた。
疲れ果て皆が眠り込んでいる時、郭靖は愕然とする。なんということか、城の前で愛娘・郭襄が金輪国師によって柱に縊りつけられまさに火をつけられようとしているのだ。
郭靖を始め皆が郭襄を助けようとするが果せない。母親・黄蓉は嘆き苦しんだ。郭靖は今は宋を守る事が先決と城へ戻ろうとした時、大鷲と共に楊過・小龍女が現れたのだ。
小龍女は美しい舞いのような戦い方で敵をなぎ倒していく。楊過は金輪国師と対決しあわやという危機に陥りながらもついに金輪を倒し得た。
そして楊過は蒙古の大ハーンをも倒し、宋に勝利をもたらしたのだ。
歓喜の行進の中で楊過は30年前、郭靖が重陽宮に自分を入れてくれたことで今の自分があると感謝した。
そしてやっと楊過と小龍女は二人だけの世界へと旅立った。見送る郭芙は二人がいつまでも幸せに暮らせるよう祈るのだった。
かなり端折った書き方ですが、この最後の一話はこれまでの物語をかなりぶっ壊してくれるような破壊力があってなんとも言い難いものがあるのだ。
楊過は宋のために蒙古と戦っていて郭靖からも「民の為に戦う者こそ本当の大侠だ」と讃えられるのだが、蒙古への反撃の凄さ、大ハーンを串刺しにしてしまう酷さ。郭芙までにんまり笑ってるのが戦争というのはこういうものだなと思わせられるのであるが結局宋が蒙古に破られる運命にある。つまり漢民族が征服されるというのをここで鬱憤を晴らしているわけなんだろう。
というかここらで鬱憤を晴らしておかねばならないほど蒙古軍は怖ろしいものだったのであろう。
それにしてもその戦いを演出する特殊効果がかなりミジメなもので無理に入れなくてもよかったのではと思わせる。
全編に渡ってひねくれ者であった郭芙も夫・耶律斉を楊過が助けてくれ、一旦は叩頭しろと言った楊過に覚悟を決めた郭芙を「冗談だ」と言って止めてくれたことでやっと心を改めたようである。
原作のイメージと違い一躍人気者になった金輪は弟子にしようとした郭襄を柱に縛り付けて人質にするなど人気も失墜かと思いきや最後に襄を庇って倒れてきたものの下敷きになり「最後に一言師匠と呼んでくれ」と言って泣かせる。うーん、いいけど先程まで殺そうとしてたくせに師匠と呼べっていうのは。呼んであげる襄って本当にいい子だ。
そしてやっとやっと結ばれた楊過と小龍女。最後はやはり谷底に戻ったのだろうか。
郭襄の言葉通り二人がいつまでも幸せに暮らせるよう願いたいものである。
ラベル:金庸